人工知能による血液培養検体の黄色ブドウ球菌とコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の判別の試み

  • 南 暁彦
    天理よろづ相談所病院 総合内科 天理よろづ相談所病院 放射線科

書誌事項

タイトル別名
  • Differentiation between <i>Staphylococcus aureus</i> and coagulase-negative staphylococci using deep learning

抄録

<p>【はじめに】血液培養陽性例において,病原性の強い黄色ブドウ球菌と病原性の低いコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)の迅速な判別が求められるが,グラム染色による形態的な区別には困難を伴う.そこで本研究では人工知能による分類アルゴリズムを導入し,鏡検画像を分類することを目的とした.</p><p>【方法】2019 年から2020 年の入院患者の好気性ボトルにおける血液培養陽性症例のうち,黄色ブドウ球菌とCNS のグラム染色検体の撮影を行い,学習・検証用データと感度・特異度を評価するための診断精度評価用データに振り分けた.学習・検証用データは512 × 512 ピクセルの画像に分割し,それを手作業で黄色ブドウ球菌,CNS,背景の3 つに分類した.Python+Tensorflow を用いてInceptionResNet V2 による転移学習アルゴリズムを組み込んだ畳み込みニューラルネットワークを構築し,Amazon Web Service 上にて教師あり分類として手作業で分類した学習・検証用データを学習させた.また,この学習済みモデルと診断精度評価用データを用いて以下のように感度・特異度の評価を行った.鏡検画像を512 × 512 ピクセルのセルに分割し,それぞれのセルの黄色ブドウ球菌・CNS・背景の確率を出力し,黄色ブドウ球菌またはCNS と判断されたセルの黄色ブドウ球菌の確率の平均をその鏡検画像の黄色ブドウ球菌「らしさ」として用いた.このスコアを用いてMALDI-TOF の結果をゴールドスタンダードとした感度・特異度を評価した.</p><p>【結果】黄色ブドウ球菌32 症例とCNS の症例15 症例のグラム染色像を撮影し,それぞれ22 症例と10 症例を学習・検証用データとして,10 症例と5 症例を診断精度評価用データとして用いた.学習・検証用データの画像を512 × 512 ピクセルの画像に分割した結果,黄色ブドウ球菌の画像5,163 枚,CNS の画像6,313 枚,背景の画像13,955 枚 を得た.これの7 割17,804 枚を学習用に,3 割7,628 枚を検証用に用いた.これにより学習を行い,診断精度評価用データにて感度・特異度評価を行ったところ,感度・特異度はそれぞれ67% と87%(AUC 0.778)となった.</p>

収録刊行物

  • Tenri Medical Bulletin

    Tenri Medical Bulletin 26 (2), 120-122, 2023-12-25

    公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所

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