大起伏山地でのEC連続観測に基づく流出源の空間変動の検討

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  • Spatial Variability of Sources of Runoff Based on Continuous EC Observation in Steep Mountainous Catchments.

抄録

<p>近年発生件数の増加傾向にある土砂災害の予測精度向上のためには山地での流出機構を検討することが必要不可欠である。流出機構の理解のための観測データの蓄積が必要な一方で、1~10 km2の中規模流域かつ大起伏な山地流域は観測事例が少ない(浅野, 2014)。中でも流出源の推定に資するトレーサに関する情報はさらに限られているのが現状である。そこで、中規模流域かつ大起伏山地流域において、河川水の流出源の時空間変動に関する情報を得るために雨量、水位、ECの多地点かつ高頻度な連続データを蓄積し、河川水の流出源について考察した。調査対象流域は大井川水系東河内川流域内の地質が付加体堆積岩で、流域面積は最大5.5 km2、最小0.16 km2である6つの流域とした。比高は最大1,355 km2である。6流域の末端でECと水位の連続観測を各5分、1分間隔で実施した。東河内川流域内で10分間雨量を観測した。Cano-Paoli et al. (2019) の方法に準じて、常に表流水がみられた流域の河川水の連続ECから、水位ピーク時刻tの全流出におけるevent waterの寄与率fe(t)を計算した。本川源流域の平水時のECの平均は大きく、季節変動も大きかった。支川流域では一年を通してECの平均が比較的小さい流域と大きい流域が存在した。ECが大きいほど流出水の起源が深いという仮説の下では、平水時の流出源が比較的浅い流域と深い流域が存在する可能性が示唆された。特に類似した流域面積・地質を持つ隣接した左支川の2流域で異なるEC応答が見られたため、平水時の流出機構が異なる可能性が考えられた。常に表流水がみられる流域について、同じ降雨イベントでも流域によって寄与率が異なった。降雨イベントに依らず出水時のevent waterの寄与率が相対的に大きい流域と小さい流域が存在した。また平水時のECと出水時のevent waterの寄与率との関係から、大局的には平水時の流出源が深い流域ほど、出水時にもpre-event waterが大きく寄与している可能性が示唆された。しかし、平水時の流出源が比較的浅いと推測される流域で出水時のpre-event waterの寄与が大きい流域もあった。類似した流域面積・地質を持つ隣接する2流域で、かつ平水時のECも近い値を示したにもかかわらず洪水流出経路が異なる可能性が考えられた。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580143069211904
  • DOI
    10.11520/jshwr.36.0_388
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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