血漿中coproporphyrin-IおよびIIIを用いたOATP1B/2B活性の評価-慢性腎臓病患者における検討-

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抄録

<p>【目的】</p><p>有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)は様々な基質薬の取り込みに寄与しており、OATP1Bは主に肝細胞に、OATP2Bは主に肝細胞および一部腸管に存在する。近年、OATP1B活性を評価するバイオマーカーとしてcoproporphyrin-I(CP-I)と coproporphyrin-III(CP-III)が着目されている。CP-IはOATP1Bへの基質特異性が高くCP-IIIはOATP1BとOATP2Bによって輸送されるため、CP-IとCP-IIIを評価することでOATP1B/2B活性を同時に推定できる可能性がある。本研究では慢性腎臓病(CKD)患者を対象としてOATP1B/2B活性の評価を行うために血漿中CP-IおよびCP-III濃度を測定しOATP遺伝子多型との関連やOATP1B活性を低下させることが報告されている3-carboxy-4-methyl-5-propyl-2-furanpopanoic acid(CMPF)の血漿中濃度との関連を評価した。</p><p>【方法】</p><p>大分大学医学部附属病院腎臓外科・泌尿器科に通院中のCKD患者72 名を対象にした。OATP1B1遺伝子多型(OATP1B1*15)、OATP2B1遺伝子多型(rs2306168およびrs12422149)はリアルタイムPCR法、血漿中CMPF、CP-IおよびCP-III 濃度はUPLC-QTOF/MS法にて測定した。</p><p>【結果・考察】</p><p>OATP1B1*15保有群では非保有群と比較してCP-I(p = 0.003)およびCP-III(p = 0.034)濃度において有意な高値を示した。OATP2B1遺伝子多型(rs2306168およびrs12422149)の有無によってCP-IおよびCP-III濃度に有意な差はなかった。CMPF濃度にカットオフ値を設定し(1.全患者、2.CMPF<10、3.<8、4.<4、5.<2.5 μg/mL) 、CP-IおよびCP-III濃度との相関を評価したところ、CP-I濃度では3~5において、CP-III濃度では5のみで有意な正の相関を示し、カットオフ値が低値になるにつれて相関係数が高値を示した。このことからCKD患者のOATP1B活性はOATP1B1*15の有無により変化するがOATP2B活性は遺伝子多型の有無により変化しないことが示唆された。また、CMPFはOATP1B活性を濃度依存的に阻害するが、8 μg/mL以上 でその阻害作用は頭打ちになり、個人差が生じる可能性が示唆された。一方、CMPFがOATP2B活性におよぼす影響は少ないと考えられた。</p><p>【結論】</p><p>CKD患者においてOATP1B基質薬を使用する際にはOATP1B1*15の有無によって投与量の調節が必要であり、CMPF<8 μg/mLの場合にCMPFによる濃度依存的なOATP1B活性阻害を考慮する必要があることが示唆された。一方、OATP2B基質薬については投与量調整の必要性は低いことが明らかになった。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580217715988352
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_1-c-o01-3
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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