TDMによるアセトアミノフェン誘発肝障害発症予測の可能性

DOI
  • 加藤 隆児
    大阪医科薬科大学 薬学部 薬物治療学I研究室

抄録

<p>アセトアミノフェン(APAP)誘発肝障害(AILI)の発症機序は、APAPの反応性代謝物であるNAPQIが直接肝細胞を障害することで発症することが知られており、用量依存性の中毒性機序が提唱されている。本発症機序は主にAPAPの過剰投与時のものであり、過剰投与が少ない本邦においてはアレルギー反応が関与する特異体質性の機序で起こることが示唆されている。AILIの治療としては、服用8時間以内であればN-アセチルシステインの投与が行われるが、その効果は十分でないことが報告されており、AILIの有効な予測法が求められている。演者らは、現在までにラットおよびヒト肝臓および単球由来細胞株を用いた検討により、NAPQIが中毒性および特異体質性の発症機序に関与することを明らかにしてきた。そのため、NAPQIの血中濃度測定およびそのモニタリングがAILI発症の予測に繋がると考えられるが、NAPQIは反応性代謝物であり、安定した測定を行うことが困難なことから臨床応用は難しいと考えられた。そこで、AILI発症を予測する別の指標の探索を行った。UGT1A1欠損ラットを用いた場合にAILIの発症が増加するとの論文報告があったことから、ラットを用いて血中グルクロン酸抱合体(AP-G)濃度とALTとの相関性について検討を行った。しかし、血中グルクロン酸抱合体の個体間変動が大きくALTとの相関性は認められなかった。AP-G/APAP濃度比率と検討を行ったところ、比率が低下する場合にALT上昇の可能性が示唆された。続いてヒト肝細胞を用いて検討を行ったところ、培養液中AP-G/APAP濃度比率が低下すると細胞生存率が低下し、NAPQIの生成に関与するCYP2E1をノックダウンさせると、細胞生存率およびAP-G/APAP濃度比率の上昇が認められ、AILIの予測に血液中AP-G/APAP濃度比率測定が有用である可能性が示唆された。実際に、APAP服用患者で血液中AP-G/APAP濃度比率を測定したところ、その比率が低下している患者でALTの上昇が認められる症例を経験した。</p><p> 本シンポジウムでは、TDMによるアセトアミノフェン誘発肝障害発症予測の可能性について考えると共に、反応性代謝物が原因となる重篤副作用のモニタリングにTDMが有効か否かを考えたい。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580217716103296
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_1-c-s05-4
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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