小児医薬品の開発推進に向けた環境整備と今後の展開

DOI
  • 栗山 猛
    国立研究開発法人国立成育医療研究センター臨床研究センター多施設連携部門

抄録

<p>日本の小児領域で汎用されている医薬品の60~70%は、「適応外使用」といわれているが漫然と投与されているのが現実である。この「適応外使用」の要因は様々であるが、適応が取得されている薬剤のみで薬物療法を実施するのは事実上不可能である。この小児での適応外使用を解決していくためには、薬事承認を取得するための開発推進(治験実施)が必要となる。 2010年11月に全国の小児医療施設等から構成された小児治験ネットワークが設置された。この小児治験ネットワークは、小児治験の効率化・症例集積性の向上(情報集約)による開発コストを削減し、小児医薬品・医療機器等の開発が容易となる環境を整備することを目的に全国の小児医療施設等55施設が加盟・連携して活動している。また2014年からは、小児に精通する人材(CRC)育成を目的として、「小児CRCの教育・研修プログラム」の作成を開始し、2017年には、小児CRCの養成及び小児施設のCRCの情報共有を永続的に実施していくために小児CRC部会を発足し活動している。 2017年9月から日本小児科学会が中心となり、分科会や関連学会と協同でネットワークを組織し、製薬企業が開発を目指す、或いはすでに治験(国際共同治験も含む)として開発中(開発計画中も含む)の医薬品について、その領域の専門家が本邦での小児の診療における重要度等を検討し開発優先度を評価するとともに、企業の治験実施の支援・協力を行う体制を構築することで、小児医薬品開発を推進することを目的とした小児医薬品開発ネットワークも稼働開始した。 これにより、本邦での小児開発について、専門的助言を担う小児医薬品開発ネットワーク(日本小児科学会)と治験実施フィールドである小児治験ネットワーク並びに小児CRC部会の連携も進み、産官学連携による小児医薬品開発の更なる促進が期待される。本邦での小児医薬品開発は、欧米に比べると整備が遅れている感は否めないが、様々な施策を通して日本でも取組みが活発化している。また開発推進のみでなく、小児における医薬品の使用実態の把握、安全対策(有害事象等の把握)についても両輪で進めていく必要がある。 本シンポジウムでは、小児医薬品開発推進に向けた活動並びにその他関連する活動を通して本邦での小児医薬品開発・安全対策推進に向けたインフラ整備、今後の展開・発展について紹介したい。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580217716118656
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_1-c-s13-5
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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