薬剤性肺障害のフロントライン: 副作用と向き合うための知識と要点

DOI

抄録

<p>薬剤性肺障害、特に薬剤性間質性肺疾患 (drug-induced interstitial lung disease: DI-ILD) は生命予後に大きく関与する重篤な副作用であり、新薬の開発と共に年々増加の一途を辿っている。特に日本人は欧米人や他のアジア人と比較し、重篤なDI-ILDの合併頻度が高く、本症の発症に遺伝的素因の関与が推定されている。薬剤の内訳は、抗悪性腫瘍薬や関節リウマチ治療薬が多く、死亡率の高いEGFR-TKIや、近年では免疫チェックポイント阻害剤 (ICI) によるDI-ILDが注目を集めている。DI-ILD合併のリスク因子として、1) 既存のILD、2) 高齢、3) 喫煙歴、4) 放射線治療、5) 全身状態の悪化 などが挙げられる。この中で最も重要な因子は既存のILDであるため、薬剤投与前には、高解像度CT画像 (HRCT) によるスクリーニングが重要となる。DI-ILD合併後のHRCTパターンは、器質化肺炎 (OP) パターンや非特異性間質性肺炎 (NSIP) パターン、過敏性肺炎 (HP) パターン、びまん性肺胞障害 (DAD) パターンなど多様であるが、最も予後不良とされるのはDADパターンである。重篤なDI-ILDを回避するため、特に投与開始初期には短期間でのモニタリングを繰り返し、胸部の聴診および胸部レントゲンやCT、血清KL-6・SP-D・LDH等を総合的に判断し、DI-ILDの早期発見、早期の薬剤中止が肝要である。しかし一方で、mTOR阻害剤やICIでは、無症状かつ軽微な肺野病変のみの場合 (Grade 1) 、厳重な観察のもとに治療を継続することが可能である。以前と比較してDI-ILDの頻度は圧倒的に増加したものの、薬剤の効果と副作用のバランスを考慮した包括的医療を提供することも実臨床では求められている。上記の様に、薬剤の副作用と向き合うために必要な知識と要点について概説する。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580217716125440
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_2-c-el09
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ