自発有害事象報告事例に散見される単独処方患者での責任酵素遺伝子多型に伴う仮想薬物血中および肝中濃度上昇

DOI

抄録

<p>【目的】多様な薬物相互作用等に起因する副作用が疑われる報告症例を収集した「医薬品副作用データベース(JADER)」を用いた解析研究が展開されている。それらの症例の中には、医薬品単独処方による事象報告も含まれている。これら有害事象の一因に薬物代謝酵素の遺伝子多型に基づく機能低下の寄与も想定されることから特定集団の仮想薬物血中と肝中濃度を推定した。【方法】主にチトクロムP450 3A4、2C9および2D6により代謝消失されるアトルバスタチン、セレコキシブとジクロフェナクおよびアトモキセチンをモデル薬物とした。JADER登録事例中、上記薬物それぞれ単独処方にて減量または服薬中止に至った258、150、56および14患者の薬物曝露由来と推定される有害事象率を経時的に集積した。薬物酸化反応のin vitroまたはin vivo責任酵素寄与率と当該変異型酵素のin vivo機能低下を加味した肝固有クリアランス値を用い、仮想経口投与後の薬物血中と肝中濃度を推定した。【結果と考察】アトルバスタチン、セレコキシブ、ジクロフェナクおよびアトモキセチンの減量または服薬中止に至った事例は、単独処方登録事例の約53%, 19%, 13%および24%であった。P450 3A4.16および2C9.3をホモ接合型で持つ仮想患者の場合、アトルバスタチンとセレコキシブの推定血中および肝中濃度はいずれも3-4倍程度上昇した。ジクロフェナクおよびアトモキセチンの責任酵素寄与率は、in vitro に比較してin vivoでやや低値を示す乖離があるものの、P450 2D6.10をホモ接合型で持つアトモキセチン服用小児患者での肝中曝露は数倍程度の上昇が見込まれた。【結論】薬物由来の有害事象には様々な要因があるが、単独処方時には責任酵素遺伝子多型がもたらす薬物毎の肝中曝露増大も、酵素阻害薬併用時と同様に、処方薬減量または服薬中止をもたらす肝有害事象を惹起しうることが推察された。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580217716137344
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_3-c-o18-5
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ