インクレチンによる糖尿病治療の新展開

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  • 矢部 大介
    東海国立大学機構岐阜大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌代謝内科学/膠原病・免疫内科学 東海国立大学機構One Medicine創薬シーズ開発・育成研究教育拠点

抄録

<p>近年、新たなインクレチン関連薬として、GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドが上市され、2型糖尿病において血糖をほぼ正常域まで改善しうること、また著明な減量効果を発揮しうることから、肥満2型糖尿病に対する有望な治療選択肢として期待される。チルゼパチドは、単一分子でありながら、GLP-1とGIPの2つの受容体を同時に活性化しうるように設計された。GLP-1、GIPは共に食事応答性に消化管内分泌細胞から分泌され、膵β細胞からの血糖依存的インスリン分泌を増強する。しかし、慢性高血糖下ではGIPのインスリン分泌増強作用が著しく減弱し、またGIPが脂肪組織へのエネルギー蓄積促進から肥満を助長するため、当初、多くの研究者や企業がGLP-1の臨床応用に注力した。しかし、生理的濃度をはるかに超える薬理学的濃度のGIPが食欲抑制、減量効果を発揮することが明らかとなり、創薬標的としてGIPに対する関心が高まっている。実際、著者らも薬理学的濃度のGIPがレプチンと協同的に弓状核において摂食抑制を司るPOMC神経を活性化することで食欲抑制、減量効果を発揮することを報告しているが、未だ解明されていない代謝亢進の関与も示唆されている。チルゼパチドはGIPと同様の用量反応を示す一方、GLP-1に比べて10倍近く反応性が低いことが示される。チルゼパチドが著明な血糖改善効果、減量効果を有することから、GLP-1受容体作動薬以上に心血管や腎に関してadditional benefitsを期待する声があるが、GIPに関するこれまでの知見を踏まえるとadditional benefitsは不明であり、質の高い臨床研究により評価が待たれる。本講演では、インクレチンに関する新たな知見を議論すると共に、糖尿病治療におけるGIP/GLP-1受容体作動薬の可能性について議論したい。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580217716173824
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_2-c-s28-3
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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