生体リズム情報に基づく薬物治療の最適化を目指した臨床研究

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抄録

<p>薬物療法の個別最適化を達成するためには、患者個人や患者集団から得られる固有情報を駆使する。例えば、患者固有の薬物代謝機能を推測して投与設計するために、身長・体重、性別などの身体所見、遺伝子多型情報など活用する。これらの多くは静的な情報であり、個体間変動因子として捉えることが可能である。一方で、本講演タイトルにある「生体リズム情報」も投与設計に利用する情報であるが、時々刻々に変化する生体機能であるために動的な情報として捉える必要がある。そのため、生体リズム情報の活用方法にはいくつかのアプローチがある。</p><p>1. 生理機能の日内リズムを是正する:血圧や凝固線溶系に認められる日内リズムのために、心筋梗塞による救急搬送件数は午前中に多いことはよく知られている。血圧日内リズムの異常、特に夜間血圧が十分に低下しない non-dipper 型では臓器障害の進展リスクが高い。このアプローチには、生理機能の日内リズムを測定できるデバイスの開発と、収集した日内リズムデータからアウトカムを予測する解析手法が不可欠である。</p><p>2. 薬物感受性の日内リズムを応用する:多くの薬物は投薬時刻によってその効果や毒性が異なるが、このアプローチは細胞傷害性の抗悪性腫瘍薬に代表される。抗がん薬治療は患者の治療継続性に大きく左右されるため、薬物有害反応をできるだけ軽減する対策が重要になる。これを達成するためには、基礎研究の成果に基づいて熟考された臨床研究が不可欠である。</p><p>3. 生理機能の日内リズムを考慮する(基本的に同調する、時には拮抗する):生体が元来所有する日内リズムを乱さないことが、健全な体内時計機能を維持するためには大切である。このアプローチは副腎皮質ホルモン剤で古くから実践されているおり、本剤を長期間に渡り使用する際には、副腎機能抑制を回避するために朝に投与されることが一般的である。しかし一方で、生体の免疫機能や免疫寄与細胞数に認める日内リズムからホメオスタシスを考えると、朝の副腎皮質ホルモン剤投与が免疫性疾患に対して最も効果的であるとは言い難い。</p><p>本講演では、これら3つのアプローチで実施した臨床研究の成績を紹介し、時間薬物治療の有用性を述べる。最後に、時間薬物治療の普及に向けて克服すべき課題を提起し、その打開策について考えてみたい。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580217716293632
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_3-c-s39-4
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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