政府・民間・海外部門間の貸借関係に着目したマクロ経済分析フレームワーク

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<p> 本稿では,一国の対外バランスや,政府部門・民間部門の債務の持続可能性等を包括的かつ整合的に分析することを目的に,政府・民間・海外部門間の貸借関係に着目したマクロ経済分析フレームワークを検討した。具体的には,日本経済を分析対象として,政府・家計・非金融法人・金融機関・海外の各部門の純借入・純貸出を構成するフロー変数,及び資産・負債等のストック変数について,部門間のリンケージを考慮して部分均衡モデルを構築した。本モデルでは,人口動態や為替・物価・金利等のマクロ変数等に係る前提条件の下で,政府・民間部門の支出や収入等の見通しを推計し,部門間の貸借関係がどのように推移するかを整合的に示すことが可能である。このため,例えば政府部門の債務持続可能性を検討するに当たっても,政府部門の収支等の見通しだけでなく,民間部門・海外部門を含む経済全体の絵姿を記述し,検証することができる。</p><p> シナリオ分析の事例として,足もとの経済成長率等に基づく現状延伸シナリオでは,高齢化に伴う家計の純貸出幅の緩やかな減少及び財政赤字の緩やかな増加を,企業の対外収益の増加が補う形で,経常収支は黒字が維持される絵姿が示されたが,企業の対外収益率に依存する推計結果からは,海外経済のショックに対する脆弱性も示唆された。次に,家計の消費性向や企業の投資性向が上昇し,経済成長率の改善につながるシナリオでは,民間部門の純貸出幅の減少と財政赤字の拡大によって経常収支が赤字に転換し,国内の国債消化能力が低減することで財政の金利ショックに対する脆弱性が増す可能性が示唆された。</p><p> 最後に,為替・物価・金利等のマクロ変数の変動が各部門のフロー・ストックに与える影響について確率分布を用いて分析する手法も検討した。対外収支の見通しが各マクロ変数の変動によって非常に大きなばらつきを示す結果となり,パラメータの変動に伴う不確実性に十分留意する必要があることが確認された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580228771771008
  • DOI
    10.57520/prifr.154.0_106
  • ISSN
    27584860
    09125892
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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