大腿四頭筋セッティング時の筋厚、膝蓋下脂肪体の動態変化について ~超音波エコーを用いた検討~

DOI
  • 永江 槙一
    医療法人和仁会 和仁会病院 リハビリテーション部
  • 戸村 莉帆
    医療法人和仁会 和仁会病院 リハビリテーション部
  • 里 勇汰朗
    医療法人和仁会 和仁会病院 リハビリテーション部
  • 長谷川 隆史
    医療法人和仁会 和仁会病院 リハビリテーション部
  • 中村 雅俊
    西九州大学 リハビリテーション学部 理学療法専攻

書誌事項

タイトル別名
  • O-115 基礎

抄録

<p>【はじめに】 膝蓋下脂肪体(IFP)は膝関節構成体の中で最も疼痛閾値が低いことが報告されており、膝関節術後のAnterior knee painの要因の一つである。また膝関節術後は内側広筋(VM)の選択的筋萎縮が生じることやIFPの線維化、膝蓋骨高位の変化などが生じることも報告されている。超音波エコーを使用することでIFPが筋収縮に伴い、関節内から近位へと移動する様子が観察でき、IFPの線維化に対する予防・治療効果があると考えられている。膝関節の術後リハビリテーションにおいて頻繁に用いられる大腿四頭筋セッティング(QS)における大腿四頭筋の筋厚の変化がIFPの動態変化に及ぼす影響を検証することで膝疾患患者の治療の一助になると考える。そこで本研究の目的はQS時の大腿四頭筋の筋厚とIFPの動態変化の関係を明らかにすることとした。</p><p>【対象および方法】 膝関節に既往のない6例12膝(全例男性)を対象とし、平均年齢は36.7±8.7歳であった。大腿四頭筋筋厚とIFPの動態評価には超音波診断装置を使用した。測定肢位は長坐位、膝関節屈曲20°とし、安静時、最大収縮によるQS時のVM、中間広筋、外側広筋(VL)、大腿直筋の筋厚を測定した。IFPは膝蓋骨遠位1/3、内外側の前後幅とpatellar tendon-tibia angle(PTT角)を測定した。各組織の厚さ、PTT角の測定値は3名の検者の平均値を算出した。統計解析は統計解析ソフトウェア(SPSS Ver. 22)を使用し、Shapiro-Wilk検定にて正規性を確認した。また、条件間の差はWilcoxon符号付順位検定を実施し、測定条件間の差の相関はSpearman順位相関係数を算出した。尚、それぞれの有意水準は5%に設定した。</p><p>【結果】 条件間の差は、QS時にVLでのみ有意に低値、その他の項目は全て高値を示した(p<0.05)。IFP前後幅の平均は内側0.9 ㎜、外側は1.4 ㎜増加した。また、測定値間の相関については、VM差とIFP外側差にのみ有意な正の相関が見られた(p<0.05, ρ=0.81)。</p><p>【考察】 IFPは機能的な変形によりPF関節の緩衝作用や関節軟骨と膝蓋靭帯の摩擦を軽減する作用を担う。本研究ではVM差とIFP外側差に有意な正の相関を認めた。先行研究において、VMの選択的収縮により膝蓋骨の内側移動および傾斜が増加するとの報告や、健常膝ではIFPの動態を受け入れる膝周囲組織、特に外側膝蓋支帯の柔軟性を有しているとの報告もあり、それらがIFP外側の移動量増加の要因になったと考える。今回VM差とIFP外側差に正の相関が見られたことからVMの収縮力がIFPを外側に押し出す量に関係している可能性が示唆された。しかし、本研究では膝蓋骨アライメントや軟部組織の張力などは測定できておらず筋収縮による膝周囲組織への影響は不明確である。</p><p> またIFPの前後幅の変化量に関しては、内外側いずれも先行研究に比べ低値であった可能性があり、本研究ではIFP内側と外側の移動量には相関がなかった。IFPの体積や動態に関しては被験者特性の影響も考えられるため、今後被験者数を増やし検証していきたい。</p><p>【結語】 QS時の筋厚とIFPの動態に関してVM差とIFP外側差に有意な正の相関を認めた。IFPの動態変化には筋機能に加え、膝蓋骨アライメントや膝周囲組織の柔軟性なども影響している可能性が示唆される。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に基づき、個人情報に対する倫理的配慮を行うとともに、書面にて発表に対する承認を得た。尚、本研究は発表者が所属する和仁会病院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:230502)。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580239850517504
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_115
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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