回復期リハビリテーション病棟での多職種協働による病棟訓練導入の効果判定

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タイトル別名
  • O-122 成人中枢神経⑥

抄録

<p>【目的】 当院の回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)では、生活再構築を目標に多職種協働で患者の病棟生活のマネジメントを行い、リハビリテーション提供時間以外の21時間に何を行うかをチームで協議を重ねている。取り組みとして2020年より看護師主導の病棟訓練導入を推奨しているが、調整不足で十分な介入に至っていないケースもある。</p><p> 今回、回復期リハ病棟入棟の患者を対象に疾患別で病棟訓練導入による効果の違いがあるのかを検討した。</p><p>【対象・方法】 対象は、2022年4月1日から2023年3月31日までの期間に、当院回復期リハ病棟の1病棟を退院した患者282名。そのうち、当該病棟入棟時FIM運動項目が回復期リハ病棟施設除外基準の76点以上であった患者25名、急変で当該病棟を転院となった患者等32名は対象外とし、225名を研究対象とした。</p><p> 研究方法は、対象を、疾患別に運動器疾患117名、脳血管疾患83名、廃用症候群25名に分類し、当院電子カルテ診療録より病棟訓練実施の有無、内容、頻度を調査した。</p><p> 統計処理は、病棟訓練実施群、非実施群のFIM利得(運動項目)を算出し、マンホイットニーのU検定を用いて比較した。なお、統計解析は、Statcel2(Excel統計)を用いて有意水準は5%未満で判定した。</p><p> 病棟訓練の内容は、カンファレンスにて患者の生活課題の共有、それに対する目標の設定を行い決定している。具体的な介入方法は、理学療法士等と看護師が訓練動作方法の冊子を作成する。病棟訓練は1日20分程度を目安とし看護師が介入を行なっている。現状として、看護師の人員不足や他業務量過多のため十分な介入に至っていないケースもある。</p><p> 本研究は、熊本託麻台リハビリテーション病院倫理審査委員会の承認(受付番号2305)を得て実施した。</p><p>【結果】 運動器疾患では、病棟訓練導入群63名(FIM利得30.5±12.3点)、非実施群54名(FIM利得27.6±12.8点)。病棟訓練導入群が非実施群に比べ優位にFIM利得の改善がみられていた(p=0.039)。脳血管疾患でも、病棟訓練導入群48名(FIM利得31.9±13.1点)、非実施群35名(FIM利得20.6±12.9点)、病棟訓練導入群が非実施群に比べ優位にFIM利得の改善がみられていた(p<0.01)。廃用症候群では、病棟訓練導入群12名(FIM利得27.5±12.0点)、非実施群13名(FIM利得20.0±12.2点)、両群にFIM利得の改善の差はみられなかった(p=0.16)。</p><p> 具体的な病棟訓練の実施内容としては、歩行訓練、立位訓練が主であり、患者平均で在棟日数の81.1%の頻度で病棟訓練が導入されていた。</p><p>【考察】 脳卒中ガイドライン2021では、回復期脳卒中患者に対して日常生活動作を向上させるために、もしくは在宅復帰率を高めるために多職種連携に基づいた包括的なリハビリテーション診療を行うことが勧められ、回復期において訓練時間を長くすることは妥当であるとも述べられている。動作を運動学習にて定着させるには、生活課題の難易度をチーム間で一定に保ち繰り返し行うことが重要である。今回は、看護師と生活課題を共有し、病棟訓練を導入することで、適切な難易度の運動学習の機会を提供でき、運動器疾患、脳血管疾患患者に関しては、病棟でしているADLを向上させることが出来た。このことは、リハビリ提供時間以外に効率的な運動の場を設定できた結果だと考えられる。しかし、廃用症候群患者に関しては、病棟訓練導入による効果がみられにくく、原因疾患や症状の把握や個別性のある対応、提供時間が足りなかったのではないか等、さらなる検討・改善が必要だと考えられた。</p><p> 今後も多職種協働での病棟訓練を推進し、効果的な療養環境が提供できるよう取り組みを進めていく。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580239850520320
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_122
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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