新型コロナ感染症患者への退院後の自己管理の指導が必要だと感じた一例

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タイトル別名
  • O-156 呼吸・循環・代謝③

抄録

<p>【はじめに】 当院では2022年11月21日より感染病床を確保し、リハビリテーション(以下、リハビリ)スタッフも新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の感染病床専従として勤務をしている。当院の感染対策として、リハビリはフルPPEで1回の介入時間は20分、1日2~3回介入している。今回、入院前のADLは自立、就労しているCOVID-19の症例を担当した。短期間、短時間のリハビリ介入では退院までに活動性の高い職場復帰までの耐久性の回復は難しく、自主訓練指導など退院後の自己管理の指導の重要性を感じたため、ここに報告する。</p><p>【症例紹介】 50歳代男性。病名:COVID-19、中等症Ⅰ。既往歴:高血圧、肺化膿症。喫煙歴:40年ほど前から20本弱/日。現病歴:家族がCOVID-19発症4日後、本人も発熱。発症第4病日にA病院受診。COVID-19の診断、胸部X線にて肺炎像あり、A病院入院。発症第5病日に当院へ転院、37.8度の発熱あり。抗ウイルス剤を前医から5日間、発症第8病日まで実施。主訴:呼吸苦、倦怠感、味覚障害、食欲低下。職業:自営業(鉄鋼業、仕事内容は事務や現場で20~30 ㎏の荷物の運搬など)</p><p>【初回評価(発症第8病日)】 KT:36.6℃。SpO2(ルームエア):安静時95~96%、運動時93~94%。歩行:30mで修正Borg scale:5、心拍数:108bpm、呼吸数:28回/分。FIM:98/126点。活動性:トイレ以外はベッド臥床傾向。症状:咳・呼吸苦・頭痛・倦怠感。CRP:11 ㎎/dL。画像所見:右肺に擦りガラス様の陰影が末梢優位に広範。</p><p>【経過】 理学療法はCRPが11 ㎎/dLから7 ㎎/dLに下がり、肺炎像が減少してきた発症第8病日にリハビリ処方あり介入開始。呼吸苦、倦怠感による活動性の低下が問題点であると考え、短期目標に体調に応じて自主訓練を行うこと、長期目標に職場復帰を挙げた。理学療法は呼吸リハビリマニュアルの運動療法の中止基準に準じて介入した。発症第8病日、発症第9病日は食事が摂取できず補液と捕食少量のみの摂取であり、呼吸苦、倦怠感が強く呼吸法の指導や上下肢のストレッチ、主観的運動強度での歩行訓練など低負荷の運動から開始。呼吸苦、息切れあるが運動を続けようとする場面もあり、SpO2や脈拍、呼吸数に合わせて運動を行うように指導した。発症第10病日より食事が7割程度摂取できるようになり、活気向上傾向で筋力訓練、有酸素運動、自主訓練指導を開始した。この頃は倦怠感消失し、リハビリ以外の時間で上肢・下肢の筋力訓練など自主訓練を実施。発症第13病日までの5日間介入し、状態改善し発症第14病日、入院期間8日目で退院となった。</p><p>【最終評価(発症第12病日)】 KT:36.2℃。SpO2(ルームエア):安静時95~97%、運動時94~95%。歩行:6分間で360m程度、修正Borg scale:5、心拍数:120bpm、呼吸数:29回/分。FIM:108/126点。活動性:ベッド上胡座で過ごすなど離床時間も増え、自主訓練実施。症状:咳。CRP:1.31 ㎎/dL。画像所見:肺炎像軽減。</p><p>【考察】 症例は、早期の職場復帰を希望していた。自主訓練も意欲的に取り組まれたが呼吸苦がありながら、無理して運動することもあり職場復帰後の自己管理が課題であると考えた。職場復帰には耐久性向上が求められたが感染病床での短期間での介入では耐久性の回復も完全ではなかったため仕事同等の動作など、負荷量の高い訓練は不十分な状態での退院となった。そのため、体調に応じた自主訓練の継続や動作に合わせた呼吸法の指導など具体的な自己管理の指導が退院後の生活において重要であったと考える。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当院倫理委員会の承認を得て行った(承認番号:2303)。また、得られたデータは個人情報が特定出来ないよう十分な配慮をした。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580239850544896
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_156
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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