脊椎関節炎に対するステロイド治療後に遺残した仙結節靭帯部痛に理学療法を行い改善した一例

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タイトル別名
  • O-031 骨関節・脊髄①

説明

<p>【はじめに】 今回脊椎関節炎(spondyloarthritis:SpA)と診断され薬物療法後のCRP低下後に残存した仙腸関節部の動作時痛に対して、理学療法介入による運動療法にて改善を得た症例を経験したので報告を行う。</p><p>【症例】 60歳代女性。X年4月の仕事後から両側腰部・殿部・大腿部の疼痛が出現し歩行困難となったため他院へ入院。化膿性脊椎炎の診断で治療継続されていたが、炎症反応高値が遷延したため同年5月に当院内科に精査入院となりSpAと診断された。入院時に両殿部に自発痛(安静時・起居動作時NRS:4)があり、MRIにて両側仙腸関節にSTIR高信号域を認めた。入院時の血液検査はCRP:28.23 ㎎/㎗と高値であった。股関節伸展制限(右−30度/左−10度)、Patrick test両側陽性であった。BI:25点であり日常動作全般において介助を要した。</p><p> 入院後早期にステロイド投与開始し、投与後24日目でCRPが沈静化し、安静時痛の軽減を認めた。しかし起き上がり動作・歩行動作時の疼痛は依然として持続していた。</p><p>【理学療法アプローチ】 理学療法介入は入院後10日目から開始し、脊椎や股関節の関節可動域訓練・起居動作訓練を実施。入院後27日目にCRP値が沈静化するも、One finger testにて動作時の仙結節靭帯部痛が持続していたため、プログラムの再構築を行なった。起き上がり動作では上肢により柵を引っ張ることで腰椎過前弯が生じ疼痛を誘発していた。また歩行動作では右下肢立脚中期~後期にかけて股関節伸展制限の代償として腰椎過前弯が生じ疼痛を誘発していた。このような動作を繰り返していたことで多裂筋の筋緊張が亢進し、付着する仙結節靭帯部の疼痛を誘発していると考えた。さらに腰椎過前弯が生じる原因として腹部低緊張が認められ、ASLRが困難であったことから骨盤帯周囲筋の機能不全と考えた。アプローチとして骨盤帯の安定性に寄与する腹横筋、横隔膜、骨盤底筋群、多裂筋のコアユニットに着目し、ドローイン、四つ這い運動、座位バランスクッション上運動を段階的に実施した。結果、起き上がり動作時・歩行時の疼痛は消失(NRS:0)し、BI:90点となり入院後85日目で杖歩行自立となったため自宅退院することが可能となった。</p><p>【考察】 SpAは脊椎や仙腸関節といった体軸関節や、手指関節などの末梢関節に炎症を来す疾患である。治療の第一選択薬は生物学的製剤やステロイドであり、反応は比較的良好とされる。仙腸関節の関節包や靭帯組織には侵害受容器が多数存在し疼痛の発生源となる事や、関節の不安定性を有した仙腸関節で反復動作が行われることで疼痛が生じるとの報告もされている。仙腸関節への負荷軽減にはコアユニットを同時に働かせることが重要であるとされており、本症例に行なった治療は効果的であったと考えられる。</p><p>【まとめ】 近年薬物療法の進歩により早期からの治療効果が期待できるが、殿部痛が遺残した場合には仙結節靭帯部の評価・治療介入が有用である症例が存在することが示唆された。</p><p>【倫理的配慮】 ヘルシンキ宣言に基づき、本報告の目的や内容について書面を用いて説明し、署名を持って同意を得た。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580239850558336
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_31
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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