腰部痛を有すパーキンソン病患者における腰曲がり角度や腰部筋断面積および脂肪浸潤度の影響について

DOI
  • 益田 頌子
    医療法人 城南ヘルスケアグループ くまもと南部広域病院 リハビリテーション科
  • 嶋本 稔也
    医療法人 城南ヘルスケアグループ くまもと南部広域病院 リハビリテーション科 熊本大学大学院 医学教育部 脳神経内科学講座
  • 本島 拓哉
    医療法人 城南ヘルスケアグループ くまもと南部広域病院 リハビリテーション科
  • 平田 綾佳
    医療法人 城南ヘルスケアグループ くまもと南部広域病院 リハビリテーション科
  • 野島 健碁
    医療法人 城南ヘルスケアグループ くまもと南部広域病院 リハビリテーション科
  • 福永 貴之
    医療法人 城南ヘルスケアグループ くまもと南部広域病院 リハビリテーション科
  • 川野 裕貴
    医療法人 城南ヘルスケアグループ くまもと南部広域病院 リハビリテーション科
  • 敷島 侑政
    医療法人 城南ヘルスケアグループ くまもと南部広域病院 リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • O-003 成人中枢神経①

抄録

<p>【目的】 パーキンソン病では腰部痛の罹患率が高く、臨床場面においても腰部痛の訴えは多く聞かれる。腰部痛は、活動量の低下や運動の阻害因子となり、精神的な苦痛も伴い生活の質までをも低下させる。そのため、腰部痛を予防することは、大変重要な課題とされている。そこで本研究では、腰部痛のあるパーキンソン病患者において疼痛の程度によって運動症状や腰曲がり角度、腰部筋の変性に違いがあるのかについて明らかにすることを目的とする。</p><p>【方法】 当院に入院となったパーキンソン病患者の中で、整形外科的疾患がなく筋骨格性の腰部痛がある患者31例を対象とした。Numerical Rating Scale(NRS)にて疼痛を評価し、疼痛の程度からMild群(NRS:1-3)14例、Moderate群(NRS:4-6)9例、Severe群(7-10)8例の3群に分け、運動症状、腰曲がりの角度、傍脊柱筋群の筋断面積および脂肪浸潤度を比較した。運動症状はパーキンソン病の評価スケールであるUnified Parkinson’s Disease Rating Scale(UPDRS)partⅢを用い、筋断面積および脂肪浸潤度は腰部MRI(T1強調画像)をもとにImage Jを用いて第3腰椎レベルにて当該筋をトレース後算出した。</p><p>【結果】 Mild群、Moderate群、Severe群において年齢、BMI、罹患期間、Yahr重症度、抗パーキンソン病薬量などでグループ間の有意差は認められなかった。また、UPDRS partⅢ、傍脊柱筋群内の脂肪浸潤度においても有意差は見られなかった一方で、腰曲がり角度(p<0.001)と傍脊柱筋群の筋断面積(p=0.04)においては有意差を認めた。Post hoc testとしてSteel-Dwass法にて多重比較を行った結果、Mild群と比較しModerate群(p>0.001)およびSevere群</p><p>(p>0.001)間で有意に腰曲がり角度が大きかった。傍脊柱筋群の筋断面積においては、多重比較にて有意な差は認められなかった。また、サブ解析にてNRSを目的変数とし、腰曲がり角度を説明変数として単回帰分析を行った結果、有意性をもって(p<0.001)、決定係数0.63とやや強い正の相関を示した。さらに、腰曲がりの角度に影響を与えている因子についてSpearmanの順位相関係数を用いて解析したところ傍脊柱筋群内の脂肪浸潤度(r=0.54, p=0.002)、UPDRS partⅢ(r=0.45, p=0.02)、筋断面積(r=-0.42, p=0.02)の順で有意差を持って相関を示した。</p><p>【考察】 腰部痛がMild群に比べModerate群やSevere群では腰曲がり角度が大きく、腰部痛の程度に腰曲がりの角度が関与している可能性を示した。これは、腰曲がりの角度を予防することが疼痛を回避できる手段の一つになりえる可能性を示す。さらに、腰曲がりの角度は傍脊柱筋群の筋内脂肪率および筋肉量、運動症状が関連する可能性が示唆された。パーキンソン病における腰曲がりの原因は様々な要因が考えられており、本研究で抽出した変数のみではすべてを明らかにすることは難しい。しかしながらこのような結果は、今後のパーキンソン病に対するリハビリテーション介入の一助となりうる可能性を秘めている。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580239850566912
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_3
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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