先天性骨欠損症児に対する両膝義足装着による独歩獲得に難渋した一例

DOI
  • 中村 善則
    熊本託麻台リハビリテーション病院 小児リハビリテーションセンター
  • 浪本 正晴
    熊本託麻台リハビリテーション病院 小児リハビリテーションセンター

書誌事項

タイトル別名
  • O-066 小児・発達

抄録

<p>【はじめに】 先天性骨欠損症は百万人に一人と言われるきわめて稀な疾患で、両側の骨完全欠損では膝関節離断に至る事が多い。今回、先天性両脛骨列欠損症を呈し両膝関節離断術後の児を担当した。発達段階にあり義足適合の難しさ、転倒の恐怖心から独歩獲得に難渋したため、治療経過に考察を加え報告する。</p><p>【症例紹介】 先天性骨欠損症の膝関節離断術後男児、10歳。5歳までは自宅で過ごし就学1年前から就園、現在地元の小学校へ通っている。当院には3歳から通院。初診時股関節の他動的関節可動域は特に問題なく、筋力は体幹筋の弱さあり、5歳までの発達検査では、運動面を除きほぼ正常域であった。</p><p>【倫理的配慮】 本研究は、本人、保護者に趣旨と目的を説明し承諾を得ると共に、当院倫理委員会にて承認を得て実施した。</p><p>【治療経過及び考察】 以下に治療経過を2期に分け報告する。</p><p>①義足適合から義足歩行獲得期(3歳~7歳)</p><p> 初診時は断端末で数歩独歩可能。継手無しの肩掛けの骨格構造膝義足にて歩行器歩行がみられたが、義足装着の拒否有り。歩行時に突然手を離すなど危険認知の低さ見られた。約半年後、骨格構造膝義足ライナー式膝継手ロック式に変更、独り立ちが可能となったが、転倒の恐怖心が強かったため、短義足に変更し独歩可能となった。4歳半から成長に合わせ義足長の延長を行い、就園を機に装着時間が向上し、義足での独歩が実用化してきた。5歳3ヶ月膝継手(トータルニー)の練習を開始し6歳半には膝屈曲しながらの歩行が可能となった。この時期は数か月ごとに義足不適合があり、ソケットの微調整を繰り返していた。</p><p> 歩行獲得には、発達過程における歩行パターンの反復、バランス能力発達1)や身体図式の発達など様々な要因が考えられている。本児の3歳時には、自己身体の認識及び協調的運動が未発達で、義足歩行を行うために、股関節、大腿部の筋及び断端面からの情報を駆使した繊細な下肢の運動制御は、本児にとって難しく、「転倒への恐怖心」「装着拒否」などが生じていたことが考えられる。その為、本児の認知力に合わせて、短義足を用い段階的に運動学習を行うことで独歩可能となった。義足長を長くしたものではまだ恐怖心が強く、独歩不可で大腿部の繊細な制御力は未発達であったことが考えられる。しかし、この時期に就園、就学により先生や他児との関わりを通して歩行の成功体験が増え自信をつける事ができたことで装着時間が延長し、さらに動的立位の時間が増え遊動式膝継手を用いた義足の独歩獲得に繋がったと考えられる。</p><p>②義足独歩不能から歩行再獲得期(8~10歳)</p><p> 8歳時、長距離歩行にて右大腿部に痛みと新型コロナウイルス流行にて5ヶ月ほどリハ自粛となり、その間使用しなかったことからソケットが適合不良となり9歳頃に義足の作り直しを行ったものの歩行困難となった。しかし、9歳4ヶ月には、独歩再獲得し、義足の自己装着も可能となった。</p><p> 義足の再作成直後は歩行不能であったが、一旦身につけた歩行能力であったため、再度練習することで歩行を再獲得しやすかったと考えられる。今後も、長期間未装着は、独歩困難となる可能性があり自己管理を含め十分注意していくことが必要と考えている。</p><p>【今後の展望】 先天性骨欠損症児の両膝義足による独歩獲得までの理学療法経過を報告した。発達段階に応じた義足選定、認知力を踏まえた運動課題の反復練習が必要であった。今後同様のケースを担当した場合の一つのモデルとなり、理学療法を考えていく上での参考となると考えている。</p><p>【文献】</p><p>1)岡本勉他:乳幼児の歩行獲得―立位から安定した歩行へ―.歩行獲得研究所,2013.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580239850574848
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_66
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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