八代地域における当院の小児リハビリテーションの現状

DOI
  • 西村 理佐
    八代市医師会立病院 リハビリテーション科
  • 木下 詔子
    八代市医師会立病院 リハビリテーション科
  • 松村 祥子
    八代市医師会立病院 リハビリテーション科
  • 橋本 和依
    八代市医師会立病院 リハビリテーション科
  • 西本 真帆
    八代市医師会立病院 リハビリテーション科
  • 浪本 正晴
    熊本託麻台リハビリテーション病院 小児リハビリテーションセンター

書誌事項

タイトル別名
  • O-067 小児・発達

抄録

<p>【はじめに】 当院がある八代市は、熊本県中央部の南側に位置し、第2の人口を擁する。八代市では、小児リハビリテーション(以下、小児リハ)が過疎的状況である。当院はその専門的な機能をもつ施設ではないものの地域ニーズに応えるべく平成23年4月1日に小児リハ外来を開設した。小児リハ担当は理学療法士(以下、PT)4名、作業療法士(以下、OT)2名、言語聴覚士(以下、ST)3名である。今回、過去5年間のデータをもとに小児リハの現状と課題を報告する。</p><p>【対象と方法】</p><p>1)対象:過去5年間(平成30年4月~令和5年3月)の小児リハ外来を利用した174名。</p><p>2)方法:診療録より、①利用児数 ②居住地域 ③紹介元 ④利用開始年齢 ⑤疾病分類 ⑥PT, OT, ST毎の利用数について調査した。</p><p>【倫理的配慮】 本研究は個人情報の管理には十分配慮し、当院規定に基づき承認を得ている。</p><p>【結果】</p><p>①利用児数:年平均利用児数は全体が90名程度、新患20名程度で特に令和元年~2年に一旦減少しその後緩やかに戻りつつある。</p><p>②居住地域:八代市90.2%、八代市外4.6%、県内3.4%、県外1.7%。</p><p>③紹介元:熊本県こども総合療育センター56.9%、八代市内保健医療機関19.0%、県内周産期病院19.0%、その他5.1%。</p><p>④利用開始年齢:PTは3ヶ月~12歳(中央値1歳)で0~1歳が多く、OTは1~12歳(中央値6歳)、STは2~14歳(中央値6歳)でOT, STは5~6歳の開始が多かった。</p><p>⑤疾病分類:神経発達症(自閉スペクトラム症、注意欠陥多動症等)69名、言語障害(構音障害、言語発達遅滞等)38名、低出生体重(児)25名、発達遅滞(運動発達遅滞、精神発達遅滞等)22名、染色体異常9名、脳性麻痺5名、その他6名。</p><p>⑥PT, OT, ST毎の利用数:PT単独37名(21.3%)、OT単独16名(9.2%)、ST単独82名(47.1%)。また、39名(22.4%)はPT, OT, STいずれかの重複利用であった。</p><p>【考察】 利用児数では、新型コロナウイルス感染症の流行時期に減少傾向がみられた。居住地域では、通院距離の近い八代市内が殆どを占め地域ニーズが確認できた。紹介元は、半数が熊本県こども総合療育センターで、次に八代市内保健医療機関や県内周産期病院からも紹介されるようになり、開設以降徐々に当院小児リハが認知されてきたと思われ、今後さらに地域の療育関連機関との連携を進めていきたい。</p><p> 利用開始年齢は、PTは発達初期段階からの早期介入傾向があり、運動発達に対する支援の必要性が予測された。OT, STでは就学に伴う利用が多く、生活動作や言語面でのニーズの高さが伺えた。また、疾病は幅広く、特に神経発達症が多い。これは文部科学省令和4年の調査による「小中学生の8.8%に発達障害の可能性がある」という報告が当院でも反映されたものとなった。</p><p> PT, OT, ST毎の利用は、特にSTの需要が高くここ数年は待機児童が増え、その解決策として外来看護師と連携した窓口体制を整えた。また全体の22.4%は重複利用でありライフステージや発達状況に応じて各職種が役割を分担し、連携しながら支援していくことが重要と考える。特に就学前のケースにおいては家庭、教育機関との連携も今後の課題となっている。</p><p>【今後の展望】 今後も対象年齢の幅や疾病が多岐にわたり様々なニーズが予測される。これらに応えるため、質の高い小児リハの提供及び地域との連携を図り、利用児とその家族の満足度が得られるように今回得られた様々な課題に取り組んでいきたい。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580239850579456
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_67
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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