人工呼吸器関連肺炎に罹患した患者に対し高頻度胸壁振動法と腹臥位療法を併用した一症例 ―a case report―

DOI
  • 片岡 高志
    大分大学医学部附属病院 リハビリテーション部 大分大学大学院 医学研究科 博士課程
  • 児玉 史弘
    大分大学医学部附属病院 リハビリテーション部
  • 坪内 優太
    令和健康科学大学 リハビリテーション学部 理学療法学科
  • 岩崎 達也
    大分大学 医学部 整形外科

書誌事項

タイトル別名
  • O-083 呼吸・循環・代謝②

抄録

<p>【はじめに】 高頻度胸壁振動法(High Frequency Chest Wall Oscillation:HFCWO)は、胸郭に振動を与え、肺・気道内の分泌物を移動させることで、気道クリアランスの獲得を目的としている。ほかにも気道クリアランスの獲得を目的とした手段は、積極的な離床や腹臥位療法、セラピストが実施する呼吸介助による排痰法などが存在する。しかしながら、呼吸介助による排痰法は、手技や技術の違いにより効果に個人差がある。そこで今回、人工呼吸器関連肺炎に罹患した患者に対してHFCWOおよび腹臥位療法を併用した症例を経験したので報告する。</p><p>【症例紹介】 50代男性、BMI:23.7 ㎏/㎝2。クライミング中に5mの高さから転落し受傷。骨盤骨折、左大腿骨転子部骨折と診断される。既往歴なし。受傷前の日常生活動作は全て自立。</p><p>【経過】 当院搬送後、経口挿管管理となり骨盤骨折に対し創外固定術、翌日に左大腿骨転子部骨折に対し、観血的骨接合術が施行された。術直後より酸素化の増悪を認め、気管支内視鏡を用いて粘稠痰が吸引された。入院4日目に無気肺また人工呼吸器関連肺炎と診断された。入院10日目に創外固定術後の骨盤骨折に対し観血的骨接合術が行われ、術後抜管された。翌日の理学療法介入時、喀痰は創部疼痛や粘稠痰により困難であった。酸素マスク(5L/分)装着下で離床した際には、SpO2の低下や修正Borg Scale5程度の呼吸困難感を示し、また理学療法介入時の胸部X-ray・CT上の異常陰影、酸素化の増悪、肺聴診では両肺背側に呼気時の気管支呼吸音化を認めた。</p><p>【理学療法プログラム】 入院7日目より理学療法開始、骨盤創外固定下にて四肢可動域訓練から実施した。入院11日目に離床、腹臥位療法を開始した。入院14日目以降、腹臥位でHFCWO(5分間/日)を実施した。</p><p>【結果】 HFCWOを用いたことで、入院14日目以降の喀痰を容易化することができた。さらには入院18日目の胸部X-ray上の異常陰影は改善を認め、離床時の酸素化の改善や修正Borg Scale0~2の呼吸困難感を示した。また肺聴診による副雑音は認めなかった。</p><p>【考察および結論】 今回、骨盤の創外固定が長期化したことで、人工呼吸器関連肺炎に対し、体位交換を行うことができず、下肺野背側の病変、増悪を引き起こした。腹臥位療法は、粘稠痰や創部疼痛による咳嗽力の低下により、効果はあまり示さなかった。先行研究では、HFCWOは従来行われてきた徒手での呼吸理学療法と同様の治療効果が得られたとされる。また、痰の吸引回数が増加したことや、胸部X-rayの改善を認めた報告もある。ゆえに、粘稠痰に対してHFCWOを併用したことで喀痰が可能になったと考える。HFCWOは手技や技術を問わず行うことが可能である。HFCWOは今後の急性期呼吸理学療法においての治療の選択肢として有用であると考えられる。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき発表に関する内容説明を実施し、同意を得た。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580239850656256
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_83
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ