平滑筋細胞核変形の組織引張方向依存性:高血圧に対する大動脈壁応答の異方性との関係

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抄録

<p>高血圧に曝されると動脈壁は肥厚し,生理状態における円周方向応力が一定に保たれることが知られている.一方,軸方向応力についてはこのような応答は見られず,生理状態の軸方向応力は高血圧血管では低くなる.この原因の一つとして,血管壁内で円周方向に配向する平滑筋細胞が細胞長軸方向の張力には応答するが,短軸方向の力には応答しない可能性が指摘されていたが,詳細は明らかでなかった.ところで最近,血管壁の肥厚には核の変形が関与する可能性が指摘されている.すなわち,高血圧に曝されることで組織の変形,ひいては細胞核の変形が増加し,これが核内のクロマチンの分散を引き起こし,転写・翻訳が盛んになり,最終的にタンパク質産生を促進され,壁が肥厚する可能性が指摘されている.そこで,家兎胸大動脈から厚さ0.2 mmの薄切片を軸方向と円周方向に垂直な面内から切出し,円周方向と軸方向にそれぞれ引張り,核とアクチンフィラメント(AF)ネットワークの変形を調べた.AFの変形は組織全体の変形と同様であったが,核の変形はそれらよりも有意に小さかった.特に組織を軸方向に引張った場合,核は殆ど変形しなかった.核がAFを介して細胞外マトリックスと繋がっていると仮定するとこの現象を上手く説明することができた.血管壁の軸方向引張りに対し平滑筋細胞核が殆ど変形しないことは,高血圧に対し軸方向応力が保たれないことの理由のひとつかも知れない.</p>

収録刊行物

  • 生体医工学

    生体医工学 Annual61 (Abstract), 134_2-134_2, 2023

    公益社団法人 日本生体医工学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580295543914240
  • DOI
    10.11239/jsmbe.annual61.134_2
  • ISSN
    18814379
    1347443X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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