細胞運動でがん細胞を診る

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抄録

<p>原発巣から遠隔組織への転移は、がん完治を困難なものにしている臨床上の課題である。転移はがん細胞の運動制御の異常に起因する。私たちは、抗転移薬の開発に貢献することを目的として、転移性がん細胞、非転移性がん細胞、及び、正常細胞の運動特性の違いに基づいて、がん細胞を識別する細胞アッセイ法の構築を進めてきた。転移性がん細胞識別のための指標として、ポリスチレン製の細胞培養皿の二次元平面上を運動する細胞から抽出した運動・形態パラメータの時系列データ、及び、ポリジメチルシロキサン上に付与されたマイクロメートルオーダーの微細溝に接触した細胞の運動特性、具体的には進入確率を用いた。二次元平面の運動特性を指標とする手法では、4種の運動・形態パラメータを組み合わせて判別に用いることで、転移性乳がん細胞(MDA-MB-231)、非転移性乳がん細胞(MCF-7)及び乳腺上皮細胞(MCF-10A)を80%以上の精度で識別することができた。微細溝における運動特性を指標として用いる手法では、転移性線維肉腫細胞(HT1080)と非転移性線維芽細胞(3T3-Swiss Albino)を70%程度の精度で識別することができた。加えて、溝開口部の曲率及び溝幅が、がん細胞と非がん細胞の運動特性の違いを顕在化させることが明らかになってきている。今後、これらの転移性がん細胞の識別に寄与する細胞内外のパラメータを基に、さらなる識別精度の向上と転移メカニズムの検証を進め、抗転移薬の実現に貢献したい。</p>

収録刊行物

  • 生体医工学

    生体医工学 Annual61 (Abstract), 161_2-161_2, 2023

    公益社団法人 日本生体医工学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580295543927296
  • DOI
    10.11239/jsmbe.annual61.161_2
  • ISSN
    18814379
    1347443X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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