甲状腺乳頭癌への悪性転化を認めた成熟囊胞性奇形種の1例

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タイトル別名
  • A case of ovarian mature cystic teratoma with malignant transformation to papillary thyroid carcinoma and review of the literature
  • コウジョウセン ニュウトウガン エ ノ アクセイ テンカ オ ミトメタ セイジュクノウホウセイ キケイシュ ノ 1レイ

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説明

卵巣成熟囊胞性奇形腫の悪性転化の80%は扁平上皮癌であり,甲状腺乳頭癌への悪性転化はき わめてまれである.今回われわれは,両側卵巣囊腫核出術後の病理診断で甲状腺乳頭癌への悪性転化 を認めた卵巣成熟囊胞性奇形腫の1例を経験したので報告する.症例は26歳,未妊未婚,既往歴,家族 歴には特記事項なし.下腹部痛を主訴に前医を受診し経腟超音波検査,骨盤MRI検査で両側卵巣腫瘍 を認めたため紹介受診となった.血液検査ではCA19―9・SCCの基準値からの上昇を認め,MRI検査で は両側卵巣に10cm大の囊胞性腫瘤が認められ,T2強調像にて高信号と低信号が混在していた.T1強 調像では内部に高信号部分を呈する箇所が認められ,脂肪抑制で高信号は消失し,両側成熟囊胞性奇 形腫と診断された.腹腔鏡下両側卵巣腫瘍摘出術を実施した.両側とも術中被膜破綻した.病理組織 所見にて左卵巣腫瘍から扁平上皮組織とともに甲状腺濾胞様構造の増生と散存性に乳頭状構造を示す 部分を認めた.濾胞上皮は腫大した核を有し,核溝や核内封入体を有するものを認め,成熟囊胞性奇 形腫の甲状腺乳頭癌への悪性転化と診断した.診断後の血中甲状腺ホルモン値は正常範囲内であった. 年齢および挙児の希望を考慮して,再発リスクを説明したうえで妊孕性温存の方針とした.追加術式 として,腹式左付属器摘出術,大網切除術を実施した.術後進行期分類はstageIC1期 pT1cN0M0.追 加切除標本に残存腫瘍は認めず,術後補助化学療法は行わない方針とした.術後17カ月の時点で再発 徴候は認めず,外来観察中である.本症例のように術後病理診断で悪性腫瘍と診断された場合には, 年齢,妊孕性温存の希望,術中所見や残存腫瘍の有無などから治療方針を決定する必要があると考え られる.甲状腺乳頭癌への悪性転化はきわめてまれであり,確立した治療方針はなく,今後さらなる知見が必要である.〔産婦の進歩76(1):60―68,2024(令和6年2月)〕

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