ベトナム沖ガス田における有効根源岩の推定と詳細な石油システム解析

書誌事項

タイトル別名
  • Identification of effective source rock and detailed petroleum system analysis on gas fields, offshore Vietnam

抄録

<p>東南アジア地域の新生代堆積盆地の多くは高い炭化水素ポテンシャルを有しており,各堆積盆地における石油システムの解明・特徴づけが行われている。その結果,東南アジア地域にはリフト期(漸新世)およびポストリフト期(中新世)に,それぞれ別の根源岩が存在することが示唆されている。前者はリフト発達時に堆積した湖成頁岩であり,埋没深度が比較的浅いより小規模な堆積盆地(例えばベトナムのクーロン盆地)に掘られた坑井において,油生成能力の高い湖成根源岩が確認されている。埋没深度がより深く実際に同じ層準まで坑井が掘り込まれていない大規模な盆地(パタニトラフ,マレー盆地,南コンソン盆地など)においても,盆地発達史の類似性から,同根源岩の発達の可能性が想定される。後者はリフトが埋め立てられる過程で堆積した河川~デルタ成の根源岩(石炭層)である。東南アジア地域の新生代の石炭層は水素に富み,ガスだけでなく油も生成する能力があることが知られている。</p><p>東南アジア地域には,このようにタイプの異なる根源岩において,その分布域や熟成域,油ガスの生成タイミングが異なる複数の石油システムが存在する。そのため探鉱段階では有効根源岩を特定し,複雑な石油システムを理解する必要がある。有効根源岩を推定する手法の1つとして,原油やコンデンセートのバイオマーカーや同位体組成を利用した地化学インバージョンがあり,広く用いられている。これにより坑井で直接掘り込めない盆地中心部の深部に存在する有効岩の特定も可能となる。さらに各根源岩の熟成度や油ガスの生成タイミングは堆積盆地シミュレーション,いわゆるベースンモデリングにより評価することができる。</p><p>本スタディでは,近年発見されたベトナム沖のガス田から採取された流体試料(油・コンデンセート・ガス)において地化学インバージョンを実施した。バイオマーカーおよびダイヤモンドイド化合物の解析により,2つの油ファミリー(湖成と河川~デルタ成の混合原油および河川~デルタ成原油)が見出された。また炭素同位体組成から,湖成根源岩由来のガスと河川~デルタ成根源岩由来のガスが貯留層中で混合した可能性が示唆された。さらに,対象ガス田の岩石試料に対して流体包有物分析を実施したところ,一部の貯留層においてパレオ油コラムの存在を示唆する多数の油包有物が確認された。この貯留層は現在ガス・コンデンセートを胚胎していることから,もともと集積した油は後からチャージしたガスによってフラッシュされた可能性がある。また多次元ベースンモデリングにより,2つの根源岩から生成されたタイプの異なる流体が移動・集積の過程で混合したこと,さらに対象ガス田に更新世以降多量のガスがチャージすることにより,もともと集積していた油ガスが周辺構造へスピルアウトした可能性が示された。</p>

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