レセプトデータを活用したPCSK9阻害薬の処方実態に関する調査

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タイトル別名
  • Survey of PCSK9 inhibitor prescribing status using the claim data
  • レセプトデータ オ カツヨウ シタ PCSK9 ソガイヤク ノ ショホウ ジッタイ ニ カンスル チョウサ

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抄録

<p>目的:使用許可が得られた3自治体の国民健康保険および後期高齢者医療制度のレセプトデータを用いて,高コレステロール治療薬のPCSK9阻害薬が処方された患者の背景や特徴を把握することを目的に記述的な調査を行った.ガイドライン上でPCSK9阻害薬開始前のフェーズであるスタチン最大耐用量とエゼチミブが,併用処方された患者も参考として抽出した.</p><p>方法:2015年4月から2021年3月までのレセプトデータから,2016年4月から2017年3月までの期間にPCSK9阻害薬が未処方で,2017年4月から2020年3月までの期間にPCSK9阻害薬が最初に処方された患者群を「PCSK9群」とした.エゼチミブと最大耐用量スタチンが併用処方された患者についても同様の手続きで抽出し,「エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群」とした.PCSK9阻害薬もしくはエゼチミブと最大耐用量スタチンが最初に処方された日を起算日とし,起算日より前12ヶ月間(pre-index 期間),起算日より後ろ12ヶ月間(post-index 期間)に観察された生活習慣病治療薬,心血管イベントや冠動脈カテーテルインターベンション(PCI)手術などについて調査し,両群で比較した.Pre-index 期間の3ヶ月以上処方中断についても調査した.</p><p>結果:対象者は,PCSK9群184人(平均年齢74歳,男性57.1%),エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群1,307人(平均年齢71歳,男性60.5%)だった.起算日前後(pre-/post-index 期間)の診療・治療状況の変化を両群で比較すると,pre-index 期間では有意な差はなかったが,post-index 期間では,PCSK9群の方が虚血性心疾患の割合が高かった(85.3% vs. 76.1%,p=0.005).PCIは,起算日前後の両期間で,PCSK9群の方がエゼチミブ最大耐用量スタチン併用群より手術を受けた患者割合が有意に高かった(pre-index 期間:40.8% vs. 24.0%, p<0.001,post-index期間:13.6% vs. 8.1%, p=0.014).処方中断は,PCSK9群では44.6%の患者で認められたが,エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群ではなかった.</p><p>結論:レセプトデータの分析結果から,PCSK9阻害薬はエゼチミブ最大耐用量スタチン併用群と比較して,リスクの高い患者に使用されていることが示された.また,PCSK9阻害薬を中断した割合が約45%と高かった.因果関係までは言及できないが,PCSK9阻害薬による治療が患者側の経済的負担になっていることや,医療者側が高価な薬剤を予防目的に使用することを躊躇した可能性が示唆される.近い将来,高薬価な高コレステロール治療薬の上市が予想される.今後,費用対効果に優れる患者像を特定する研究や,より適正な薬価の検討が期待される.</p>

収録刊行物

  • 保健医療科学

    保健医療科学 72 (5), 464-474, 2023-12-28

    国立保健医療科学院

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