分娩時大量出血の要因とその対応

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<p> はじめに</p><p> 厚生労働省の人口動態統計調査によれば,2005年度のわが国における出産10万対の妊産婦死亡率は5.7で,1965年の87.6よりは改善されてきているが,1995年6.9,2000年6.3とここ10年では有意な低下をみていない(図1)。また大阪府の出産10万対の妊産婦死亡率は,1965年の88.3よりは改善されてきているが,1995年11.6,2000年3.4,2005年3.9と暦年による多少のばらつきはあるが全国統計とほぼ同様の傾向にある。</p><p> 諸外国の妊産婦死亡率をみると,スイス・イタリア・オーストラリア・スウェーデン・ニュージーランド・カナダ・ドイツなどの先進国では日本より良好な妊産婦死亡率が報告されている(表1)。</p><p> 平成8年度の厚生省心身障害研究の報告による妊産婦死亡における主要死因を示したが,産科的出血(分娩時異常出血および前置胎盤および常位胎盤早期剥離)による妊産婦死亡率は,1995年0.5,1999年1.4,2004年1.2と変化がなく,妊産婦死亡における産科的出血の割合はいまだに多い(図2)。</p><p> 1991,1992年の厚生省心身障害研究「妊産婦死亡の原因の究明に関する研究」(表2)によれば,出血性ショックが原因であったのは全体の38%であり,そのうち適切な処置や輸血が行われれば62%は救命可能であったと報告している。英国との妊産婦死亡の死因比較をしたところ,日本では出血による死亡例が多いのに対し,英国では血栓・塞栓による死亡例が多いことが特徴であった。このように日本では出血による妊産婦死亡が多い特徴があることや,特にこの10年での妊産婦死亡における産科的出血の占める割合が減少していないことなどから,今後の妊産婦死亡を減少させるためにも,分娩時出血の対応・対策がいち早く進められるべきであると考える。</p>

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390580793844651008
  • DOI
    10.34456/jspnmsympo.25.0_15
  • ISSN
    2759033X
    13420526
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
  • Abstract License Flag
    Allowed

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