歪んだ鏡のなかで ―シベリア先住民における 非異性愛規範的なジェンダーとセクシュアリティの形態の民族誌的表象

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  • In a Distorted Mirror ―Ethnographic Representations of Non-heteronormative Indigenous Configurations of Gender and Sexuality in Siberia

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抄録

ジェンダーとセクシュアリティに関する文化人類学的研究とその基礎となる認識論は、歴史的にジェンダーバイアスや男性優位論の影響を受けてきた。本報告では、ロシア極北域のジェンダー配置に関する民族誌的研究の進展、特に異性愛規範の概念から外れた生き方の解釈について検討する。  歴史的に、ロシア極北域におけるジェンダーに関する研究は、物理的な決定要因の探求に関する道徳的評価から、社会的・文化的条件の議論へと変化した。研究者の視点は、科学的言説やパラダイム同様、社会的・政治的・ジェンダー的立場の影響を受ける。しかし、この「歪んだ鏡」のような民族誌的表象に映される先住民の生きた現実に迫ることは可能だろうか? 現代の文化人類学は、研究者自身の社会的・文化的規範や植民地的幻想を含むパリンプセスト(羊皮紙)のなかに、非異性愛規範的な生活の存在を認識することができるのだろうか? 本報告では、ロシア北部とシベリアの先住民文化におけるジェンダーの多様性を扱う際の難しさに注目する。  歴史的な、また現在のロシア北方の先住民コミュニティにおける非異性愛規範的ジェンダーの存在の証拠にもかかわらず、ロシアでそれらについて公的な場で議論することは、現時点ではほとんど不可能である。プーチン大統領が最近の演説で述べたように、ウクライナに対する彼の戦争は、ジェンダーの多様性に関する西側の価値観に対するものと同様であると考えている。ロシアにおける道徳性に関する言説は、異性愛規範モデルと一致しない肯定的イメージを考慮に入れていない。伝統は保守主義と同義語と考えられ、明確に二つのジェンダー役割を定義する。ジェンダー多様性は、西側の優位性によってロシアを脅かす植民地化の圧力として非難される西側の現代性・自由主義と同一視される。

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