10-ホルミルテトラヒドロ葉酸代謝酵素の発現はミトコンドリア活性と5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドリボヌクレオシド感受性に影響を及ぼす

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タイトル別名
  • Expression of a 10-formyltetrahydorofolate-metabolizing enzyme affects mitochondrial respiration and 5-aminoimidazole-4-carboxamide ribonucleoside sensitivity

抄録

<p>一炭素単位の転移反応に重要な役割を果たす葉酸代謝は、de novoプリン合成、チミジル酸合成、ホルミルメチオニン合成のみならず、メチオニンサイクルと共同的に働くことでS-アデノシルメチオニン合成にも利用される。腫瘍細胞はその増殖性から多くのヌクレオチドを必要とするため、葉酸代謝への依存度が高い。そのため、古くから葉酸代謝拮抗薬が治療に用いられている。葉酸代謝を仲介する酵素群の内、我々は10-ホルミルテトラヒドロ葉酸(10-fTHF)からTHFへの反応を触媒するアルデヒド脱水素酵素1ファミリーメンバーL1(ALDH1L1)遺伝子に着目した。この遺伝子は肝細胞がん患者で発現が減弱するケースが多く、がん抑制遺伝子であると予想されている。肝がん細胞株であるHuH-7細胞に安定的にALDH1L1を発現させると、de novoプリン合成中間体の5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドリボヌクレオチド(ZMP)が蓄積することを見出した。これはALDH1L1による10-fTHF消費亢進の結果、細胞内10-fTHF量が低下し、ZMPの10-fTHFからのホルミル基の受容が障害されたためと考えられた。加えて、ALDH1L1発現細胞では、細胞内のセリンが減少しており、ミトコンドリアでのセリン異化反応に影響を及ぼすことが予想された。これらの代謝変化はミトコンドリアでの電子伝達系を介したエネルギー産生を抑制すると考えられた。さらに、ALDH1L1発現細胞では、ZMPのヌクレオシド体であるAICArに対して耐性を示した。AICArはALDH1L1の有無に関わらず細胞周期停止を引き起こすが、ALDH1L1発現細胞では、ミトコンドリア活性が保たれていることを明らかにした。これらの知見は、ALDH1L1発現の低い肝細胞がん患者に対し、AICArが有効な薬剤となり得る可能性を示している。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580870561219712
  • DOI
    10.14869/toxpt.50.1.0_o3-37
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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