フタル酸エステル類の動物種特異的な生体影響に関する研究 :TRPA1活性化の種差を生じるタンパク質構造の解明
書誌事項
- タイトル別名
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- Species-specific adverse effects of phthalate esters: Key protein structures that cause human-specific TRPA1 activation
抄録
<p>【目的】フタル酸エステル類への曝露はアレルギー疾患を悪化させることが報告されており、その毒性発現機構の少なくとも一部にTransient receptor potential Ankyrin 1 (TRPA1) チャネルを介したアジュバンド作用が関与するものと考えられている。我々は、Di (2-ethylhexyl)phthalate (DEHP) の加水分解代謝物であるMono (2-ethylhexyl)phthalate (MEHP) がTRPA1を活性化すること、その活性化にはヒトとげっ歯類の間で比較的大きな種差が存在することを明らかにしている。そこで、本研究ではMEHPによる種特異的なTRPA1活性化メカニズムについて検討を行った。【方法】ヒトTRPA1 (hTRPA1) をマウスTRPA1 (mTRPA1) の対応する領域と置換したキメラhTRPA1を発現するFlp-In 293細胞株を樹立し、得られた細胞株の細胞内Ca2+濃度の増加を指標として、MEHPによるTRPA1の活性化を評価した。【結果および考察】50 µM以下の範囲で、MEHPはhTRPA1を濃度依存的に活性化した (EC50値: 0.5 µM) のに対し、mTRPA1では活性化は観察されなかった。次に、hTRPA1とmTRPA1のアミノ酸を置換したキメラ体を作製し、MEHPの種特異的な作用部位の同定を試みた。その結果、N-末端領域に存在するリンカー領域およびC-末端領域の両者がMEHPによるTRPA1活性化の種差に寄与していることが明らかになった。したがって、普遍的な環境汚染物質DEHPの活性代謝物であるMEHPは、リンカー領域とC-末端領域で構成される「ポケット領域」における相互作用を介してhTRPA1のみを種特異的に活性化することが示唆された。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 50.1 (0), P1-007E-, 2023
日本毒性学会