ネオニコチノイド系農薬ばく露による雄マウスの情動認知行動解析

DOI
  • 齊藤 洋克
    国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部

書誌事項

タイトル別名
  • Neurobehavioral analysis of emotional and cognitive functions in male mice exposed to neonicotinoid pesticides

抄録

<p> 発生-発達期の脳では、神経シグナルの厳密な制御により神経回路網が形成される。一方で、この時期の脳は環境要因による影響を受けやすく、その代表例である外因性の神経作動性化学物質は、正常な神経回路網の形成を妨げ、結果として、成熟後の脳高次機能に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、神経作動性化学物質に対して高感受性を持つ発生-発達期の脳の特性を考慮し、従来の神経毒性試験では検出し難い遅発性の脳高次機能への影響について慎重に評価することが重要である。これまで我々はマウスを用いて、化学物質の脳高次機能への影響を解析するため、自発運動量、情動行動、学習記憶能、情報処理機能の変化を客観的かつ定量的に検出するバッテリー式の行動試験評価系を用いた行動解析と、その発現メカニズム解析として遺伝子発現等の神経科学的物証の収集を進めてきた。</p><p> 本シンポジウムでは、ネオニコチノイド系農薬であるアセタミプリドを用いた解析結果を中心に報告する。ネオニコチノイドは、昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChRs)に選択的に結合し、神経の興奮とシナプス伝達の遮断を引き起こすことで殺虫活性を示す。ネオニコチノイドの哺乳類の神経系に対する潜在的な影響に関しては、様々な知見が蓄積されてきているが、ヒトを含む哺乳類に対して誘発される行動毒性を議論するための情報は限られている。これまでの研究結果より、ネオニコチノイド系農薬を発生期あるいは発達期にばく露したマウスの成熟後(12~13週齢時)に行った行動試験から、学習記憶異常を主とする行動影響が認められた。今回は、特に発生-発達期に正常な脳の発達が阻害されることによって生じる神経行動毒性と、行動異常を伴う中枢神経系の精神疾患の要因の1つとしても懸念されている、胎児期、小児期における神経作動性化学物質のばく露影響について議論したい。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390580870561575552
  • DOI
    10.14869/toxpt.50.1.0_s34-3
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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