【ミニレビュー:第10回応用糖質フレッシュシンポジウム】β-1,2-グルカン関連酵素の発見と機能構造解析

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タイトル別名
  • [Mini Review] Identification and Functional and Structural Analysis of β-1,2-Glucan-related Enzymes

抄録

<p>β-1,2-結合によってグルコースが連なった多糖 (β-1,2-glucan, βG) は,一部のグラム陰性菌で主に環状糖として分泌され,宿主への共生や細胞内浸透圧の調節物質として知られている.近年,大量調製が可能になった直鎖状βGを基質として利用した原核生物由来β-1,2-glucanase (CpSGL) の単離同定が行われ,新規な糖質加水分解酵素 (GH) family144が創設された.一方で,真核生物にもβG加水分解活性を示すものが報告されているにもかかわらず,CpSGLホモログの中に真核生物由来のものは全く見出されなかった.本稿では,CpSGLに次いで,近年新規GH162が創設された糸状菌Talaromyces funiculosus由来β-1,2-glucanase (TfSGL) の単離同定及び機能構造解析を行った研究に着目し,TfSGLによって新規GHが創設されるに至った経緯について解説した.本研究ではまず直鎖状βGを用いて,培養液上清中にβG分解活性が認められる糸状菌からTfSGLの精製及び単離同定を行い,その系統解析からCpSGLとは全く異なる祖先をもつことを明らかにした.次にTfSGLの構造解析及び基質誘導体の分解様式から,E262がサブサイト+2に結合した基質の3位水酸基を介して一般酸触媒残基として機能すること,またD446が求核水とは別の水分子を介して一般塩基触媒として機能する可能性が高いことを示した.TfSGLは触媒機構の上でも新規な特徴をもつことから,新規GH familyが創設されたのである.</p>

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参考文献 (13)*注記

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