著作権侵害に対するコンテンツ・モデレーションのあり方

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タイトル別名
  • Copyright Content Moderation and User’s Interest
  • ―ユーザーの利益確保の視点から

抄録

<p>本論文は、著作権侵害対策としてコンテンツ共有プラットフォームでなされるコンテンツ・モデレーションに着目し、サービスプロバイダに対する各種規制においてユーザーの利益をいかに考慮すべきかを明らかにすることを目的とする。EUのデジタル単一市場著作権指令(DSMCD)17条及び関連する欧州司法裁判所(CJEU)での裁判例、そしてDSMCD17条を国内法化したドイツの著作権サービスプロバイダ責任法(UrhDaG)の各規定を検討した。</p><p>DSMCD17条4項は、オンラインコンテンツサービスプロバイダ(OSCCP)が自らのサービス上での著作権利侵害を抑制・予防するため、侵害著作物の利用不可能性を確保するために最善の努力を払うことを義務付けており、OSCCPはアップロードフィルター等の導入が事実上不可避であった。しかし、フィルタリングツールの導入はオーバーブロッキングを伴う可能性があり、ユーザーの表現及び情報の自由との関係で懸念が示されていた。CJEUが2022年に出した判決(C-401/19)では、17条4項の解釈は同条の他の規定をも考慮すべきであり、17条7項における合法的なコンテンツのブロッキングを防止するための措置や、同9項における不当なブロッキングに対抗するための効果的な救済措置の確立によって、EU基本権憲章11条によって保護されるユーザーの表現及び情報の自由に関する権利と、同憲章17条2項で保護される知的財産権との公正なバランスを確保するための保護措置を有していると判断された。したがって、権利者の利益だけでなく、コンテンツをアップロードするユーザーの利益も十分に考慮すべきであることが示されている。</p><p>UrhDaGはさらに一歩踏み込み、ユーザーの利益を保護する方針を打ち出した。同9条では、コンテンツが「推定的に許容された利用」(権利制限規定等の下で許容される利用)に該当する場合、OCSSPは原則として公に伝達しなければならないとしており、OSCCPに適切なフィルタリングツールの設計を実質的に求めている。</p><p>本論文では、フィルタリングツールの利用が不可避な中でユーザーの利益を考慮するためには、(1)フィルタリングツールの設計方針、(2)サービスプロバイダに適切な設計を促すための強制力、(3)フィルタリングツールを評価するための透明性とデータアクセス、(4)事後救済手続の内容と法的性質(「ユーザーの権利」の観点など)が必要となる点を指摘した。EUでの議論は日本法にも一定の示唆を与えるものであり、今後さらなる検討が必要であると結論付けた。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581070839142528
  • DOI
    10.24798/jicp.7.2_29
  • ISSN
    24329177
    24336254
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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