術中に起きた外腸骨動脈の動脈解離に対して人工血管置換を施行した生体腎移植の1例

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抄録

<p>【症例】62歳、男性。既往歴は高血圧症、潜在性結核。X-3年に腎機能悪化のため当院を紹介受診。外来のレシピエント検査やドナー検査に問題なく、X年に妻をドナーとした血液型不一致の先行的腎移植目的に入院となる。術前のCT検査では腹部大動脈・総腸骨動脈・内腸骨動脈に軽度石灰化を認めた。手術所見:ドナー腎が摘出され十分に灌流し、腎静脈吻合を行ったのちに移植腎動脈を外腸骨動脈に端側吻合した。血流再開したところ腎動脈の拍動が弱かったため再度血流遮断して吻合を外して移植腎を再灌流。再吻合を考慮したが血管内膜に異常を認め、外腸骨動脈の吻合部位を含めて切除したところ動脈解離を認めた。心臓血管外科にて外腸骨動脈を人工血管J Graft SHIELD®(9mm)に置換してから移植腎動脈と端側吻合して移植手術を継続。温阻血時間は4分、冷阻血時間は3時間20分であり手術時間は8時間52分、出血量は725mLで手術を終えた。術後の腎機能の改善はやや緩徐であったが、透析療法を行うことなく尿量は保たれ超音波検査でもグラフト血流は良好。その後は合併症なく経過し術後15日目に退院となった。術後1ヶ月の移植腎生検では急性拒絶反応を疑う所見なく、術後3ヶ月時点での血清クレアチニン値は2.1mg/dLである。今回、我々は術中に起きた外腸骨動脈の動脈解離に対して人工血管置換を施行した生体腎移植の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 58 (Supplement), s261_1-s261_1, 2023

    一般社団法人 日本移植学会

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