本邦における脳性麻痺児に対するリハビリテーションの目標指向型介入の認知度に関するアンケート調査

DOI
  • 杉本 路斗
    横浜療育医療センター リハビリテーション課
  • 堀本 佳誉
    千葉県立保健医療大学 健康科学部リハビリテーション学科
  • 大須田 祐亮
    北海道医療大学 リハビリテーション科学部理学療法学科
  • 佐藤 一成
    北海道医療大学 リハビリテーション科学部理学療法学科

Abstract

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 子ども・家族と共同で目標設定を行い、どのような活動を中心に介入すべきかを決定する介入は、様々な名称が用いられているが、その共通点は、子どもと親が協力して機能的な目標を設定すること、子どもが機能的な目標に内在する運動の問題を積極的に解決すること、目標とする課題を実際の生活環境の中で繰り返し構造的に練習することであり、Goal Directed Training (GDT)とまとめられている。本研究では、本邦での GDTに関する認知度を検証するためアンケート調査を実施した。 </p> <p>【方法】</p> <p> 本研究は「本邦における脳性麻痺児に対するリハビリテーションの実践に関するアンケート調査」の一部である。研究対象は 小児関連施設に所属する、理学療法士 (PT)、作業療法士 (OT)、言語聴覚士 (ST)とした。調査内容は、複数のシステマティック レビューおよび文献検索により抽出したGDTに関する介入法で ある、goal-directed therapy、task-oriented therapy、 functional therapy、family-centered functional therapy、 child-focused therapy、context-focused therapy、Cognitive Oriented to daily Occupational Performance (CO-OP)を対象として、これらの介入について「よく知っている」を5点、 「全く知らない」を1点として点数表記することとした。フリードマン検定を用いて7つの介入の認知度を比較した。また、クラスカルウォリス検定を用いて各介入に対するPT、OT、ST間の認知度を比較した。 </p> <p>【結果】</p> <p> 研究に同意を得られたのは23施設、167名のセラピスト (PT 83名、OT 51名、ST 33名)であり、回答率は49.6%であった。認知度は、goal-directed therapyは全セラピストの中央値は1点 (四分位範囲1点-2点)、task-oriented therapy は1点 (1点-2点)、 functional therapyは2点 (1点-3点)、family-centered functional therapy は1点 (1点-3点)、child-focused therapyは 1点 (1点-2点)、context-focused therapyは1点 (1点-1点)、 CO-OP は2点 (1点-3点)であった。フリードマン検定の結果 p<0.05であったが、事後検定の結果、各介入間の認知度の差は認められなかった。クラスカルウォリス検定の結果、全ての介入法でp<0.05であったが、事後検定の結果、各セラピスト間の認知度の差は認められなかった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 子どもと親が協力して機能的な目標を設定する介入であるGDTについて、Novakらは、GRADE システムによる推奨度の高さを報告している。GDTが実施されない理由の一つとして、系統立てた知識の伝達が行われていないことが挙げられている。本邦でも、GDTに関する介入の認知度は低いものであった。しかし、有意ではないものの、functional therapy、CO-OPの認知度の中央値は2点「少し知っている。名前のみ知っている。」であった。この2つの介入については、その内容に関して翻訳された書籍が出版されており、認知度に影響を与えていると考えられた。今後、GDTが本邦で実施されるために、系統立てた知識の伝達が必要であると考えた。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は、千葉県立保健医療大学倫理委員会の 承認を受け実施した。リハビリテーション部門責任者宛に本研究に関する資料を送付し研究協力に同意が得られた場合は、オンラインにて同意をした旨と、施設情報 (各療法士数)に関する 回答を無記名で頂いた。同意を得られた施設のセラピスト全員に、同様の資料を回覧して頂き、各個人に同意の得られた場合、無記名でのオンラインベースのアンケート調査に協力をして頂いた。</p>

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