重度脳性まひ児に対する頭部サスペンションシステムの継続した使用による頭部コントロールの変化について

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 頭部サスペンションシステム (Head Suspension System、以下 HSS)とは、頭部の重さを前頭部、後頭部、下顎をベルトで受け、頭頂部からワイヤーで吊って免荷する器具である。 今回、重度の運動障害により頭部コントロールが困難なGMFCSレベル5の重度脳性まひ児8名に対して、HSSを用いた理学療法を1年間実施した前後の変化と日常場面への機能の汎化について考察を加えて報告する。 </p> <p>【方法】</p> <p> 対象は、頭部の空間保持が困難なGMFCSレベル5の脳性まひ児 8名 (男6名、女2名)。平均10歳0か月 (7歳0か月~17歳6か月)。評価にはThe Head Control Scale(以下、HCS)を用いた。HCSは 0点から4点の5段階に点数化された尺度であり、今回は Supported Sittingの項目を用いて、介助座位時の①HSS非使用時と②HSS使用時、③理学療法場面で1年間使用した後の HSS非使用時、④1年後のHSS使用時の4回測定し評価結果を比較した。内3名 (事例A、B、C)については、頭部コントロール 機能が向上し、日常場面にHSSを導入した事例として報告する。 </p> <p>【結果】</p> <p> 対象児8名のHCSの点数は①HSS非使用時が平均1.12点であり、 ②使用時は平均3.37点であった。③1年後の非使用時の結果は平均1.62点で、8名の内3名が1年前と比較し点数に向上を認めた。④1年後の使用時の点数は平均3.62点で8名の内2名が1年前と比較し向上を認めた。事例Aは、低緊張により抗重力姿勢において随意運動が困難であり、嚥下障害による気道クリアランス不良を認めた。1年後の評価でHCSはHSS非使用時が0点から2点となり頭部保持機能の向上を認めた。現在はHSS付きの座位保持装置と立位保持具を学校へ導入し授業内で使用している。事例Bは、低緊張性と頭部運動時の過剰な筋緊張の亢進 により非対称姿勢の増加と頭部コントロールの困難さを認めた。 1年後の評価で頭部運動時の筋緊張の亢進が軽減し、HSS使用 時に頭部運動範囲の拡大を認めた。HCSがHSS使用時に2点から3点、非使用時に1点から2点へと向上し頭部保持機能の向上を認めた。現在自宅でHSS付きの座位保持装置を使用している。事例Cは、低緊張と四肢の痙性により食事場面での頭部コントロールと口腔機能、上肢活動の困難さを認めた。1年前と比較し HCSではHSS非使用時が2点から3点へと向上し、食事介助場面でHSSを使用することで食物の取り込みと口唇閉鎖、スプーン操作において代償動作が減少し、本人の動作が行いやすくなった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 今回の結果から、重度脳性まひ児において頭部の重さを免荷し頭頸部の運動を保障することにおいてHSSの使用は有用であることが確認できた。理学療法場面でのHSSの使用により、非使用時においても頭部コントロールの改善がみられた事例はあったが、日常的に「動くこと」に環境支援が必要な重度脳性まひ児においては、HSSを日常場面で使用し、頭部コントロールを発揮する機会を保障し、さまざま活動を促進することがより重要であると考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究はヘルシンキ宣言を尊守し使用した個人情報や画像等は当法人の倫理委員会の承認を得ており、対象者と保護者に説明の上同意を得ている。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 127-127, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793909760
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_127
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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