2年6ヶ月間の神経筋電気刺激に有効性を認めた青年期の片側性痙性脳性まひ児の一例

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 片側性痙性脳性まひ (以下片まひ)児において、青年期にまひ側下肢の相対的な筋短縮をきたすことを経験する。一方、日本では療育資源が限られており、歩行可能な脳性まひ児に対する理学療法の提供機会が少なく、ボツリヌス毒素療法以外に拘縮予防の手段が乏しい。神経筋電気刺激 (Neuromuscular electrical stimulation:以下NMES)は、脳性まひ児に対する保険適応はないが、安全かつ日常生活の中で使用可能である。我々の試行において、6例の青年期以降の片まひ児に対し、3ヶ月の使用により、まひ側足関節背屈可動域および足の選択運動の維持・改善を認めた (第8回日本小児理学療法学会学術大会)。今回、青年期に、まひ側足関節の背屈可動域が低下した女児に対して、 2年6ヶ月間で合計1年3ヶ月にわたり、断続的に自宅でNMESを用いた結果、足関節背屈可動域、足の選択運動および歩容の改善を認めたので報告する。 </p> <p>【症例報告および方法】</p> <p> 症例は、右片まひ児 (女児、GMFCSレベルⅡ、MACSレベルⅡ)。 12歳9ヶ月から1年間で身長が3cm伸び、右足背屈可動域が10 °から0°に悪化、また歩行時の体幹側方動揺が強くなったため、 NMESを導入した。以後2年6ヶ月の間に、3ヶ月の使用を3回、 6ヶ月の使用を1回行った。トレーニングモードはいずれの期間でも1回20分、1日1~3回、週6回施行された。理学療法 (3単位)は、導入時に入院にて8日間、導入1年後に週1回10回施行された。有効性は右足関節背屈可動域 (膝伸展位)、右Selective Control Assessment Lower Extremity (以下SCALE)の足関節・足部・足趾の合計点、10m歩行試験、Timed up and Go test (以下TUG)、右片脚立位時間、右片脚跳び回数、Edinburgh Visual Gait Scale (以下EVGS)を用いてNMES使用前後に評価した。 </p> <p>【結果および経過】</p> <p> 2年6ヶ月の間に、身長が5cm、体重が7kg増加した。足関節背 屈可動域は使用開始時0°であったが、2年半後に5°になった。 NMES休止期間に5~15°悪化、使用期間に5~10°改善した。 SCALEは開始時0点で足の運動性はなかったが、初回使用後に2点に向上し、最終評価時は3点であった。10m歩行試験および TUGにNMES使用前後で変化は見られず、全期間を通してほぼ一定であった。右片脚立位時間は開始時4秒から最高8秒に伸び、開始時にできなかった右片脚跳びはNMES導入後に数回可能と なった。EVGSは全期間を通じて14点から11点に改善した。 </p> <p>【考察】</p> <p> NMESの長期の断続的な使用により、足関節背屈可動域制限の 進行を予防でき、足の選択運動が出現し維持できた。その結果、動的なバランスが向上し、片脚跳びができるようになり、 EVGSでは体幹の側方動揺が軽減、膝関節伸展の改善が得られた。しかしながら、10m歩行試験およびTUGの改善は得られなかった。NMESの断続的な使用は、身体構造・心身機能の改善に有効な可能性が示唆された。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>写真・動画撮影、電気刺激装置の利用について、ご本人およびご家族に口頭で説明し、同意を得た上で実施して いる。 また電気刺激装置の利用および症例報告につき、社会医療法人大道会倫理委員会の承認を得ている。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 133-133, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793912192
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_133
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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