運動機会が減少したGMFCSレベルⅤの脳性麻痺者への姿勢ケア~風に吹かれた股関節変形への効果について~

DOI
  • 近藤 健
    北海道済生会小樽病院 みどりの里 機能訓練課
  • 山本 優
    北海道済生会小樽病院 みどりの里 機能訓練課
  • 大須田 祐亮
    北海道医療大学 リハビリテーション科学部

抄録

<p>【はじめに】</p> <p> 自力で左方向への寝返りが可能であったが全身運動機会の減少に伴い、二次的な変形増強が予測された脳性麻痺症例を担当した。日常生活における姿勢ケアを実施したことが変形・拘縮の進行予防につながった経験をここに報告する。 </p> <p>【方法】</p> <p> 施設入所中の50代女性で、在胎40週、3,300gにて出生。 GMFCSレベルはⅤであった。自力で左方向への寝返りが可能であったが、二次的な変形の増強や姿勢変換等の自力での全身運動機会の減少による筋力低下が生じてきていた。共同運動パターンとして頚部伸展、体幹伸展、右回旋・側屈、骨盤の前傾を伴う股・膝関節屈曲が行われており覚醒時には常時このパターンでの運動が繰り返されていた。左凸側弯 (胸腰椎カーブ)、右への風に吹かれた股関節変形 (以下、WHD)を呈していた。 個別での理学療法場面においては介入しているセラピストの衣服をつかんでしまうため、個々の関節に対する他動運動が困難であった。このことから他動運動を中心としたアプローチではなく、日常生活における姿勢ケアにより全身的な変形に対してアプローチできないか検討した。体交用のクッション等を用いたポジショニングは自身の上肢動作にて取り外してしまうことや、共同運動パターンの出現により全身の非対称性を強めることから実施困難であった。しかし、全身を乗せることができるサイズのパウダービーズクッション上で下腿を下垂する背臥位を設定したところ、上肢動作に伴う共同運動パターンと非対称性の増強が減少した。そのため同一の姿勢が日常的に設定できるよう症例専用の臥位保持具を作製して、平日の日中に4~5時間実施する姿勢ケアを病棟スタッフと連携して実践することとした。 </p> <p>【結果】</p> <p> 姿勢ケア実施直前に計測したGoldsmith Indexは右に81度であり、姿勢ケアを1か月継続した後のGoldsmith Indexは右に57度であった。 </p> <p>【考察】</p> <p> Goldsmith Indexについて最小可検変化量を超える24度の変化を認めたことから、WHDの進行予防に対して姿勢ケアの導入が一定の効果を果たしたことが示唆された。支持基底面が多く安定した安楽な姿勢を提供できたことが共同運動パターンの軽減につながり、動作時の過剰な筋緊張亢進を軽減できたことが理由として考えられた。その結果、全身の非対称性が強まることのない臥位保持が長時間可能となり、関節拘縮に対して予防効果があると言われている30分間の持続的な伸張がWHDの進行に関与する筋群に対してもたらされたと考えられた。このことから臥位保持具を使用した日常的な姿勢ケアによりWHDが改善した結果であると考えられ、実施した時間や頻度・期間についても一定の効果をもたらす上で適当であったことが示唆された。 この結果を受けWHDの進行を予防することが更衣や排泄のケ アへの困難性を軽減していくことにもつながるという理由から、日常生活姿勢として病棟生活の中に取り入れられることとなっ た。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本報告は口頭、書面にてご家族に対して内容説明を行い、代諾を得た。また、開示すべき利益相反はない。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 137-137, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793914112
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_137
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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