中高齢の脳性麻痺者における運動障害の重症度間での体幹・下肢筋の筋量および筋内非収縮組織の比較

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 本研究の目的は中高齢の脳性麻痺 (cerebral palsy: CP) 者を対 象とし、超音波画像診断装置にて評価した多数の体幹・下肢筋の筋量および筋内非収縮組織を運動障害の重症度間で比較することとした。また、群間にて安静腹臥位での姿勢アライメント、下肢筋の痙性も合わせて比較した。 </p> <p>【方法】</p> <p> 中高齢のCP者42名を対象として、Gross Motor Function Classification System (GMFCS) を用いて評価した運動障害の重症度によって、GMFCS Ⅲ・Ⅳ群7名 (年齢: 50.1±7.9歳)、 GMFCS Ⅴ群35名 (年齢: 54.2±7.6歳) に群分けした。体幹・下肢筋の筋量評価として、超音波画像診断装置 (GE Healthcare 社製) を使用し、胸・腰部脊柱起立筋、腰部多裂筋、腰方形筋、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋、大殿筋、中殿筋、小殿 筋、大腿直筋、中間広筋、外側広筋、大腿二頭筋長頭・短頭、半腱様筋、半膜様筋、前脛骨筋、腓腹筋内側頭、ヒラメ筋、後脛骨筋の筋厚を左右測定した。結合組織や脂肪組織といった筋内非収縮組織の評価として、画像処理ソフト (NIH製) を用いて 各筋の筋輝度を算出し、筋厚、筋輝度は左右の平均値を求めた。姿勢アライメントの評価として、スパイナルマウス (Index社製 ) を使用し、安静腹臥位での胸椎後彎角度、腰椎前彎角度、仙骨前傾角度を測定した。また、痙性の評価として、Modified Ashworth Scale (MAS) を用いて股関節屈曲・内転筋、膝関節伸展・屈曲筋、足関節背屈・底屈筋を評価し、左右の平均値を 算出した。さらに、粗大運動能力、日常生活動作の評価として、 Gross Motor Function Measure (GMFM) を用いた総合点、臥 位と寝返り、座位、四つ這いと膝立ち、立位、歩行・走行とジ ャンプの%点数、Pediatric Evaluation of Disability Inventory (PEDI) を用いた機能的スキルの合計点、セルフケア、移動、社会的機能の点数を算出した。 統計解析にて、体幹・下肢筋の筋厚および筋輝度、姿勢アライメント、痙性、年齢、身長、体重、粗大運動能力、日常生活動作はMann-Whitneyの検定を用いて群間で比較した。性別は Fisherの正確確率検定を用いて群間で比較した。 </p> <p>【結果】</p> <p> GMFCS Ⅴ群の中殿筋、小殿筋、大腿直筋、ヒラメ筋の筋厚は GMFCS Ⅲ・Ⅳ群よりも有意に低く、小殿筋、大腿二頭筋短頭、ヒラメ筋の筋輝度が有意に高かった。一方、GMFCS Ⅴ群にお ける腰部多裂筋の筋厚はGMFCS Ⅲ・Ⅳ群よりも有意に高かった。GMFCS Ⅴ群の股関節屈曲・内転筋、足関節背屈筋のMASは GMFCS Ⅲ・Ⅳ群よりも有意に高く、GMFMの総合点、臥位と寝返り、座位、立位、歩行・走行とジャンプ、PEDIの機能的スキルの合計点、移動が有意に低かった。その他の項目に有意な差はみられなかった。 </p> <p>【考察】</p> <p> GMFCS Ⅴの中高齢CP者の股・膝・足関節筋の筋量はGMFCS Ⅲ ・ⅣのCP者よりも低く、股・膝・足関節筋の筋内非収縮組織が高いことが示唆された。GMFCS Ⅴの中高齢CP者における体幹 ・股関節の姿勢・運動制御に寄与する腰部多裂筋の筋量は、 GMFCS Ⅲ・ⅣのCP者よりも高いことが示された。GMFCS Ⅴの中高齢CP者において、腰部多裂筋は姿勢保持・動作の間に、股関節に作用する下肢筋の筋機能低下を代償している可能性がある。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>対象者の両親、兄弟姉妹または後見人に本研究の内容についての説明を行い、書面にて同意を得た。大学における倫理委員会の承認を得た上で本研究を実施した。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 141-141, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793916032
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_141
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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