7~12歳の定型発達児における運動学的分析による縄跳び動作の特性

DOI
  • 黒木 尭稀
    大分大学大学院 福祉健康科学研究科健康医科学コース
  • 愛甲 拓海
    大分大学大学院 福祉健康科学研究科健康医科学コース
  • 鞭馬 貴史
    大分大学大学院 福祉健康科学研究科健康医科学コース 明野中央病院 リハビリテーション科
  • 萬井 太規
    大分大学大学院 福祉健康科学研究科健康医科学コース

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 縄跳び動作とは,上肢と下肢を運動させ,縄を飛び越える動作である.縄跳び動作は多くの小児が経験するが,動作の獲得に運動療法を必要とする児も存在する.適切な動作指導,運動処方を行うには縄跳び動作の運動学的な分析が必要である.これまで,成人を対象とした研究では,動作時間,体重心変位量,四肢の関節運動が重要だと示されている (Bruce et al., 2016; Chen et al., 2013; Kim et al., 2017).また,縄と足尖間のクリアランスも縄跳び動作の成功に必要な要素だと考えられる.しかし,このような変数を用いて,小児期の縄跳び動作の運動学的な特性を示した研究はない.本研究の目的は,動作時間,体重心変位量,縄と足尖間のクリアランス,および関節運動から 7~12歳児の縄跳び動作の特性を明らかにすることとした. </p> <p>【方法】</p> <p> 10名の7~12歳の定型発達児 (7歳3名,9歳2名,10歳3名,11 歳1名,12歳1名)と17名の健常成人 (21.2±1.4歳)を対象とした.縄の長さは剣状突起の高さを基準に決定した.体表と縄に計30 個の反射マーカーを貼付し,床反力計と三次元動作解析装置 VICONを用いて縄跳び動作を測定した.対象者は足を並行にした立位をとり,任意のタイミング,快適速度で縄跳び動作を開始した.50回を上限とし,縄が引っかかるまで記録した.垂直分力より跳躍開始を算出した.跳躍開始から次の跳躍開始までを1周期とし,1周期の動作時間を算出した.また,三次元座標データより1周期の前後と側方の体重心変位量,縄と足尖間の最小クリアランスを算出した.さらに,1周期の肩関節,肘関節,股関節,膝関節,足関節の運動範囲を算出した.6~15周期の平均値を算出した.15周期記録できなかった対象者は6周期か ら引っかかるまでの周期までの平均値を算出した.群間比較にはMann‒WhitneyのU検定を用いた.有意水準は5%未 満とした. </p> <p>【結果】</p> <p> 7~ 12歳児は,成人と比較して1周期の動作時間が有意に長く (p = 0.027),体重心側方変位量が有意に大きかった (p = 0.003).体重心前後変位量は有意に大きい傾向であった (p = 0.066).また,7~12歳児は,成人と比較して全関節の運動範囲が有意に大きかった (p < 0.05).一方,縄と足尖間の最小クリアランスは,群間の有意差が認められなかった (p > 0.05). </p> <p>【考察】</p> <p> 7~ 12歳児は,四肢の関節を大きく運動させて縄跳び動作を行っていることが示された.これは,7~12歳児が縄と足尖間のクリアランスを確保し,縄跳び動作を成功させるための戦略だと考 える.しかし,1周期時間は長く,体重心変位量も大きいため, 7~12歳児の縄跳び動作は不安定で,未発達であることが示唆される.今後は,年齢毎の特性を明らかにするために,サンプル数を増やし,縄跳び動作の分析を進めていく. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は,大分大学福祉健康科学部の倫理委員会の承認を得て実施した (F200016).対象者及びその保護者には事前に,口頭と書面で本研究の目的,実験手順,考えられる危険性,論文・学会での公表について十分に説明し,署名にて同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 147-147, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793918976
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_147
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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