10か月児の乳幼児健康診査調査票を用いたひとり歩き獲得の予測

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 10か月児の乳幼児健康診査 (以下、健診)では所定の調査票を用いており、医師や保健師などと多職種で情報が共有できる。調査票にある発達検査項目を運動発達の予測に活用できれば、多職種で連携して発達を支援することが可能になると考える。また、10か月児は運動発達の個人差が大きくなる時期でもあり、発達遅延が疑われれば育児不安に陥る可能性が高くなる。そのため、発達の見通しを与えることができれば育児不安を軽減できると考える。そこで、本研究では乳児のひとり歩き獲得に着目し、10か月児健診の調査票からひとり歩き獲得に関わる要因と予測の判断基準を検討したので報告する。 </p> <p>【方法】</p> <p> 対象は土佐市の10か月児健診に参加した241名の乳児のうち、早産児や低出生体重児、調査票への未記入等を除外した151名であった。データは調査票から、健診時月齢、性別、身長、体重、カウプ指数、発達検査項目の回答を収集した。ひとり歩き獲得の月齢は1歳6か月児健診の調査票から情報を得た。発達検査項目は運動や言語、社会性等に関する14の質問項目から構成され、回答は「はい」「いいえ」の2件法であった。データ処理ではひとり歩き獲得遅延の有無について、ひとり歩き獲得の月齢が16か月未満を健常群、16か月以上を遅延群と分類した。データ解析では、2群間において健診時月齢、性別、身長、体重、カウプ指数、各発達検査項目で2群の差の検定およびフィッシャーの直接確率法にて比較検討した。また、発達検査項目からひとり歩き獲得を予測するにあたり、段階的な判断が可能かどうかを検証するため決定木分析 (CART法)を行った。決定木分析では各発達検査項目で有意差があった項目を独立変数、ひとり歩き獲得の月齢を従属変数として解析を行った。統計解析ソフトにはR Ver4.0.2を使用し、すべての統計学的解析において危険率5%を有意水準とした。 </p> <p>【結果】</p> <p> 性別や身体発育面では2群間に有意差は認められなかった。一方、発達検査項目の「つかまり立ちあがり」「つたい歩き」 「一人立ち (フリーハンドでの立ち上がり)」「両手引きでの歩行 」の4項目では、可となった割合は遅延群と比べ健常群で有意に多かった。これらの項目を独立変数として決定木分析を行った結果、ひとり歩き獲得に特に強く影響を与える因子として「一人立ち」が抽出され、次いで「つたい歩き」が抽出された。すなわち、10か月児健診の時点で一人立ち可であればひとり歩き獲得が最も早く (平均11.5か月)、次いで一人立ち不可だがつたい歩き可の場合 (平均12.9か月)、最後に両者とも不可の場合 (平均14.5か月)と、発達検査項目の可否で段階的に予測できることが示唆された。 </p> <p>【考察】</p> <p> 10か月児健診時点でひとり歩き獲得の予測には、一人立ちおよびつたい歩きの可否の重要性が示唆された。調査票の内容は多職種で共有できる資料であるため、発達検査項目からひとり歩き獲得の見通しがもてることは、多職種連携に有用な科学的資料となると考えられる。また、保護者の育児不安の解消につながる支援や助言の資料にもなり得ると期待される。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究の実施にあたり高知リハビリテーション専門職大学倫理委員会に承認を得た (承認番号R1-12)。また、対象児の保護者に本研究の趣旨の書類を提示するとともに口頭でも説明し、同意書を得て実施した。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 150-150, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793921152
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_150
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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