感覚運動発達に遅れと偏りを有する拡張型心筋症児への発達支援の一症例

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抄録

<p>【はじめに】</p> <p> 感覚運動発達に遅れを有する拡張型心筋症(Dilated Cardiomyopathy:DCM)児の発達介入を経験した。感覚発達の偏りによる不快啼泣が心負荷増大に繋がりやすく、心負荷に配慮した感覚運動介入と環境設定を行い、心不全治療と並行して発達向上に繋げる機会を得たため報告する。 </p> <p>【症例報告及び方法】</p> <p> 1歳女児。在胎38週1日、3065g。周産期に特記なし。 11ヶ月時発育不良、運動発達遅滞、陥没呼吸あり保健センターから紹介。胸部レントゲンで心胸郭比72.7%、肺野透過性低下。心不全マーカー高値でDCMによる急性心不全と診断された。小児集中治療室にて鎮静、高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)、 強心薬の心不全治療開始。2病日よりPT開始。8病日一般病棟へ転棟し付添入院。発達経過をKIDS乳幼児発達スケール(以下 KIDS)で評価した。 </p> <p>【結果および経過】</p> <p> 11ヶ月時入院前KIDSは、運動0:3 操作0:10 理解言語0:9 表出言語0:11 対成人社会性1:0 で運動領域の遅れあり。 11ヶ月~1歳:寝返り不可でセット座位可。腹臥位、手掌足底接触、介入される事を拒否していた。安静時陥没呼吸を認め、不快啼泣で心拍数(以下HR)は120から136へ上昇し発汗と努力呼吸の心負荷症状が増大した。SpO2100%で不整脈なし。介入は快適な母の抱っこから前傾座位、前もたれ四つ這いを段階的に行い、HR増加を10%内に抑え心負荷症状があれば中断した。 1歳1ヶ月~1歳3ヶ月:ベッド上シャッフリング獲得。セット 立位で足を引っ込め手掌足底支持の拒否していた。安静時努力 呼吸は軽減するも心不全増悪あり、介入を座位静的活動にした。心不全寛解後に寝返り、腹臥位→開脚座位、座位→腹臥位を獲 得。介入は寝返りや抱っこ腹臥位、いす座位足底接地や姿勢変換の動的活動を漸次行なった。遊びや保育のいす座位で足底接地を増やした。 1歳4 ヶ月~1歳7ヶ月:自座位獲得。手掌足底支持の拒否は持 続していた。介入は手支持起き上がり、座位足底支持を行なった。経鼻酸素離脱と病室外許可出るも、心不全再増悪と運動量減少あり安静度は縮小。介入を座位主体とし、いすの変更で生活場面の足底支持と手の使用を促し、看護と手が使いやすい末梢ルート固定を工夫した。心不全寛解後、手づかみ食べや手内操作が増え、セット立位やいす座位で足底接地が増加した。 1歳6ヶ月時KIDSは運動0:8 操作1:1 理解言語1:4 表出言語1:0対成人社会性1:6 食事2:2 概念2:0 しつけ1:6 。運動の遅れは残存したが全領域で発達向上した。 </p> <p>【考察】</p> <p> DCMは心不全増悪寛解の慢性経過を辿り、運動負荷にはきめ細かな対応が必要とされる。本症例は、感覚発達の偏りが運動発達の阻害因子となっていた。介入は不快啼泣や心負荷症状が生じない感覚刺激量、姿勢選択、内容、頻度、タイミング、量、環境設定を多職種連携しながら調整変更して継続した。結果、母子が安定して発達支援を受け入れ、新しい感覚運動経験を積み重ねる事ができ、発達向上が緩徐ながら進むことができた。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>ヘルシンキ宣言に沿って発表の主旨と目的について保護者へ説明し、同意を得ている。 </p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 159-159, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793926656
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_159
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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