当法人における小児がんに対する理学療法の現状と課題~スタッフアンケートからの検討~

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<p>【はじめに、目的】</p> <p> 当法人は在宅療養支援診療所、訪問看護ステーションを擁し、多くの小児がん患者の自宅療養を支援し、看取りまでを行っている。リハビリテーション (リハ)部門の訪問エリアは東京23区および多摩地区の一部、千葉県北西部の東葛飾地区であり広範囲に渡っている。スタッフは現在12名、担当制はとらず、患者宅へは複数のスタッフが訪問している。情報共有はモバイル対応電子カルテ、ビジネスチャットツール等を使用。小児がん患者に対する訪問リハに関して、一定の指針や手順は示されておらず、ケースごとに悩みながら対応しているのが現状である。そこで今回、当法人の小児がん患者に対するリハについて、実施内容やスタッフの考えを把握し、今後の課題について検討することを目的として本研究を実施した。産後休業中1名、新入職者1名は対象から除外した。 </p> <p>【方法】</p> <p> 当法人のリハスタッフにGoogle フォームによる無記名 Web アンケートを実施した。調査項目は、小児がん患者に対する「評価」、「評価法」、「子どもが自ら活動できる時期に実施するリハ内容」、「子どもが自ら活動できない時期に実施するリハ内容」、「小児がんのリハで重要と思うこと」、「小児がんのリハで実際にしていること」とした。項目を複数提示し、それぞれ段階評定法で回答をもとめた。また「小児がんのリハで悩んだこと」に関して自由回答法で答えてもらった。 </p> <p>【結果】</p> <p> 回答者は8名 (回答率80%)。回答者の経験年数中央値は18年 (13~33年)、小児がんの経験人数は5~9人が5人、10人以上が 3人であった。 小児がん患者に対する「評価」は、心身機能・身体構造、活動、参加の領域で多岐に亘っていた。なかでも、ADL、呼吸機能、 福祉用具・補装具の適合とした回答が多かった。「評価法」は、ペインスケールは半数が使用すると回答したが、他は特定の評価法は使用していなかった。「子どもが自ら活動できる時期のリハ 内容」は、歩行練習、起居動作練習、筋力練習の回答が多かった。 「子どもが自ら活動できない時期のリハ内容」は、リラクゼーション、呼吸リハ、コミュニケーション支援の回答が多かった。 「小児がんのリハで重要と思うこと」は、多様な項目があがっていたが、リハスタッフ間の情報共有、子どもとのコミュニケーション、保護者とのコミュニケーションの回答が多かった。「小児がんのリハで実際にしていると思うこと」は、 「重要と思う」項目であっても「していると思う」と回答した人数は少なかった。なかでも、疾患の理解、治療内容の理解は人数が少なかった。「小児がんのリハで悩んだこと」は、急変対応・看取り・グリーフケア、リハ内容に関する内容が多かった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 小児がん患者の「評価」および「リハ内容」については病期や症状の変化に対応しながら実施されていた。「重要と思うこと 」と「実際にしていること」には相違がみられ、疾患の理解お よび治療内容の理解に関しては十分でないことがうかがえた。また「悩んだこと」は急変対応・看取り・グリーフケアが多く、スタッフ間の密な情報共有やケースごとの振り返りが必要になると考えられた。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>以下をリハスタッフへ十分に説明した。①アンケート調査への協力は自由意志であり、アンケートへの回答を以て同意を得たものとする。②回答内容はすべて統計処理を行い、個別のデータは公表しない。③回答された調査データは目的以外に使用することはなく、またデータを保存する場合は、パスワードをかけ外部に漏洩しないよう厳重に管理する。④アンケートの実施やデータ分析の過程では、個人情報の保護を徹底し、回答内容や個人が特定されないよう倫理的な配慮を十分に行う。</p>

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