脳性麻痺患者におけるPosture and Postural Ability Scaleの信頼性と妥当性の検討

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抄録

<p>【はじめに】</p> <p> 粗大運動能力分類システム (Gross Motor Function Classification System; GMFCS)でレベルⅣやⅤに相当する重度脳性麻痺患者では、脊柱側弯や股関節脱臼、風に吹かれた股関節変形などの状態を複合的に指す“Postural deformity”が好発する。出生時には変形や拘縮は認めないが、経年的に非対称的な姿勢で長時間過ごすことで進行すると考えられるため、予防的観点から姿勢を評価することが重要である。本研究は、海外で脳性麻痺患者の姿勢の評価尺度として有用性が報告されているPosture and Postural Ability Scale (PPAS)の日本語版を作成し、その信頼性と妥当性を検討することを目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p> 本研究は横断研究とし、複数の小児関連施設で実施した。日本語版PPASは開発者から許可を得た後、順翻訳、統合作業、逆翻訳を行い、開発者の最終的な承諾を得て完成させた。PPASは背臥位、腹臥位、座位、立位の計4姿勢で姿勢能力 (どのような運動が可能か)と、姿勢の質 (頭部・体幹・四肢の位置関係や体重分布など)を前額面と矢状面よりそれぞれ採点する。今回、対象は脳性麻痺患者73名 (24.0±14.5歳)とした (GMFCSレベル Ⅰ:10名、Ⅱ:16名、Ⅲ:11名、Ⅳ:19名、Ⅴ:17名)。検者内信頼性の検討として、理学療法士1名 (3年目)が28名を直接観察で 1か月以内に2回評価した。検者間信頼性の検討として、 理学療法士2名 (13年目、23年目)が30名を写真・ビデオから1回ずつ評価した。各信頼性はそれぞれ重み付けしたkappa係数を算出し、構成概念妥当性はGMFCSとのSpearmanの順位相関係数を算出した。また、内的整合性の検討としてクロンバックのα係数を算出した。 </p> <p>【結果】</p> <p> 結果を姿勢能力、姿勢の質 (前額面)、姿勢の質 (矢状面)の順に示す。検者内信頼性のkappa係数は0.99~1.00、0.93~0.98、 0.88~0.97であった。検者間信頼性のkappa係数は0.96~1.00、 0.81~0.93、0.82~0.92であった。GMFCSとの相関係数は -0.77~-0.91、-0.67~-0.76、-0.37~-0.75であった (すべてp <0.01)。また、クロンバックのα係数は背臥位、腹臥位、座位、立位の順に0.87、0.90、0.88、0.85であった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 今回、PPASは高い検者内・検者間信頼性を示した。PPASと GMFCSは1項目で弱い相関関係 (ρ=-0.37)を認め、その他すべての項目で中等度から非常に強い相関関係 (ρ=-0.66~-0.91)を認めたことから良好な構成概念妥当性が支持された。また、 クロンバックのα係数は一般的に0.8以上の値が推奨されており、今回すべての姿勢で0.8以上を示したことから、良好な内的整 合性が示された。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は東京都立大学荒川キャンパス研究倫理委員会 (承認番号:22037)の承認後、対象者と代諾者には口頭と書面を用いて研究の概要を十分に説明し、同意を得た上で実施した。本研究への協力を断っても、今後の診療や通院には何ら支障のないこと、一度同意した後でも同意を撤回できる旨を口頭と書面にて伝えた。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 165-165, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793930880
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_165
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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