応用歩行の向上を目標とし包括的に歩行機能評価を用いて理学療法介入を行った脳性麻痺児の一症例

DOI
  • 脇 遼太朗
    中川の郷療育センター リハビリテーション課
  • 楠本 泰士
    福島県立医科大学 保健科学部理学療法学科
  • 加藤 愛理
    中川の郷療育センター リハビリテーション課
  • 宮本 清隆
    中川の郷療育センター リハビリテーション課

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 小児理学療法ガイドラインにおいて、粗大運動能力分類システ ム (以下、GMFCS)Ⅰレベルの脳性麻痺児の理学療法の最終目標として応用歩行が挙げられており、階段や不整地、物や人などの状況に応じた歩行など、より応用場面での歩行獲得に向けて、歩行パターンや速度、持久力、バランスなどの歩行機能を向上する介入が重要とされている。また、近年脳性麻痺児に対する歩行機能の評価尺度の信頼性・妥当性が多く検証されている。応用歩行の評価として、ABILOCO-Kidsが開発されており、階 段昇降や物を持っての歩行、同年代と同じ速度での歩行などの応用場面の歩行能力を質問紙で評価できる。これらの歩行機能の評価尺度を用いることで、応用歩行や歩行機能を客観的、包括的に評価でき、詳細な臨床推論に繋がる可能性が考えられるが、脳性麻痺児に対し応用歩行獲得に向けて歩行機能評価を用いた効果検証はほとんど報告されていない。今回、応用歩行の向上を目標とし、包括的な歩行機能評価を用いて理学療法介入を行った症例について報告する。 </p> <p>【方法および症例報告】</p> <p> 症例は、痙直型両麻痺を呈するGMFCSレベルⅠの7歳男児で、移動能力はFunctional Mobility Scaleにて5m、50m、500m全 て5点と屋内外で独歩が可能であった。小学校入学後に保護者の 方より集団登校の際に転んだり遅れたりするという相談を受け、カナダ作業遂行測定 (以下、COPM)を用いて目標を設定し、応 用歩行、歩行機能向上目的で理学療法介入を開始した。その際、応用歩行の指標としてABILOCO-Kidsの評価を行った。ま た、歩行機能の指標として歩行パターン (Edinburgh Visual Gait Score:以下、EVGS)、速度 (10 meter walk test:以下、 10mWT)、持久力 (1-minute walk test:以下、1MWT)、バランス (Timed Up & Go test:以下、TUG)の評価を行った。理学療法介入は外来リハビリテーションにて月1回の頻度で筋力増強トレーニング、歩行練習、ホームエクササイズの指導と確認を中心に行い、6ヶ月後に応用歩行と歩行機能を評価し、1年後に最終評価として応用歩行、歩行機能、COPMの評価を実施した。 </p> <p>【結果および経過】</p> <p> 初期評価時に比べて最終評価ではABILOCO-Kidsが12→17点と応用歩行の向上が見られた。歩行機能では、EVGSが19→11点、 10mWTの平均値が10.03秒→7.39秒、1MWTが55m→70mと 歩行パターン、速度、持久力に向上が見られた。TUGの平均値は 6.38秒→6.93秒と著明な変化は見られなかった。COPMは遂行度が4点→5点、満足度が4点→6点と特に満足度で向上が見 られ、本児や保護者からも以前より転んだり遅れたりせずに集団登校ができてきたとの話があった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 本症例は理学療法介入により歩行パターン、速度、持久力に向上が見られたことで、集団登校を始めとした応用歩行の向上に繋がったと考えられる。一方、TUGの値が変化しなかった理由として、先行研究の同レベルの脳性麻痺児と比較し初期評価時から高い値であったためと考えられる。このことから、応用歩行を目標とした脳性麻痺児の理学療法では歩行機能を包括的に評価することでより詳細な臨床推論に繋がる可能性がある。</p> <p>【倫理的配慮】</p><p>本発表にあたり、その内容と個人情報の保護について本児とその保護者に書面および口頭にて説明を行い、署名による同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 171-171, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793934080
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_171
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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