公立の児童発達支援事業所における初診時主訴の特徴と専門職に求められる知識 ―10年間の後方視的全例調査―

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 児童発達支援は、地域の中核となる公立の児童発達支援事業所や支援センターと、地域に点在する民間の支援事業所がある。診断名の有無にかかわらず、公立事業所が初回の発達相談の場となることが多いが、保護者の相談内容である主訴や地域における児の特徴などの情報は極めて少ない。公立事業所での相談内容が明らかになれば、支援事業全般の療育方針や専門職が学ぶべき知識がより明確になる。 本研究では、都内中規模都市の公立発達支援事業所を利用した方の初診面談時の相談内容 (主訴)の特徴を明らかにし、診断名の有無により専門職に求められる知識に違いがあるかを明らかにすることを目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p> 2013~ 2022年の10年間で某公立の発達支援事業所にて、初診面談を行った総件数は1245件だった。初診面談時に相談したい内容 (主訴)を、面談シートに自由記述にて保護者に回答いただき、 児の月齢、性別、診断名、センター利用の紹介元を調査した。主訴の記載があった1241件を分析対象とし、記述内容を質的記述的分析方法を用いて分析した。その際、文脈に沿って意味を最小限の言葉で補い、コードとして抽出した。質的記述的分析の分析作業は、実施経験のある研究者2名が行い、複数回の修正後に研究者1名がカテゴリー表の最終版を完成させた。 対象を診断名有り群 (122名)、無し群 (1119名)に群分けし、t検定、カイ二乗検定、フィッシャーの正確確率検定にて検討した。また、従属変数を診断名の有無の2群、独立変数を性別、年齢、各主訴とし、ロジスティック回帰分析 (強制投入法)にて 検討した。統計処理にはIBM SPSS Statistics Ver.27を使用し、有意水準を5%とした。 </p> <p>【結果】</p> <p> 月齢の平均値 (標準偏差)は、診断名有り群、無し群の順に、 38.6(16.7)ヶ月、41.1(17.9)ヶ月と差はなかった (p=.144)。 初診時の主訴の自由記述は、内容から、137のコードが抽出され、13のカテゴリーにまとめられた。カテゴリーを「 」、全件数の割合を ( )に%で示す。カテゴリーは、「言語発達」 (43.9)、「保育、就学相談」(15.4)、「多動、不注意」(13.9)、 「発達全般」(13.6)、「行為の問題」(13.4)、「コミュニケーションの問題」(13.2)、「療育相談」(12.7)、「情緒の問題」 (10.1)、「運動発達」(8.5)、「摂食の問題」(3.1)、「精神発達 」(2.5)、「感覚の偏り」(1.2) 、「視機能」(0.2)で、全カテゴリーで診断の有無による差はなかった。 回帰分析の結果、性別、月齢、発達全般が抽出された。オッズ比 (95%信頼区間)は性別が1.573 (1.056-2.343)、月齢が0.988 (0.976-1.000)、発達全般が0.421 (0.200-0.886)だった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 初診時の主訴は、「言語発達」が43.9%と最も相談件数が多く、 「運動発達」は8.5%だった。児童発達支援に関わる専門職は、運動発達の知識だけでなく、言語や発達全般に関する幅広い知識や地域の保育、就学体制に関する総合的な知識が必要と考えられる。 診断名の有無には、性別、月齢、「発達全般」が関連していた。オッズ比より、専門職は、診断名の無い児には「発達全般」に 関する内容を考慮しながら、情報提供を意識していく必要性が示唆された。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は福島県立医科大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。対象者にはオプトアウトにて本研究内容を周知した。本研究への協力を断っても、何ら支障のないことを書面にて伝えた。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 28-28, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793937024
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_28
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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