セミファーラー位が重症心身障害児(者)の呼吸機能に及ぼす変化

DOI
  • 田代 峻一
    1) はながしま診療所 2) 障がい福祉サービス事業所はながしま
  • 東 菜奈子
    1) はながしま診療所 2) 障がい福祉サービス事業所はながしま
  • 米倉 照代
    1) はながしま診療所 2) 障がい福祉サービス事業所はながしま
  • 澤田 一美
    1) はながしま診療所

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 重症心身障害児(者) (以下、重症児(者))の呼吸障害に対する健康管理は生命維持機能と直結した重要な課題である。呼吸姿勢管理では腹臥位系姿勢の有用性が多く報告されているが、その他の選択肢も必要である。セミファーラー位(以下、SF位)は背臥位に比べ腹部臓器による横隔膜圧迫が軽減され、慢性閉塞性肺疾患ではリラクゼーション効果や呼吸困難感の軽減が報告されているが、実際に重症児(者)に呼吸管理目的で使用した報告は見受けられない。今回、重症児(者)に対しSF位の呼吸機能への影響を評価したため、考察を加えて報告する。 </p> <p>【方法】</p> <p> 当通所事業所を利用され、呼吸管理を行っている大島分類1の重症児(者) 9名(16~46歳、中央値30歳、四分位範囲24.5-33.5歳)を対象とした (背臥位で唾液誤嚥等の不利益がある者は除外した)。評価項目は①経皮的動脈血酸素飽和度(以下、SpO2)②脈拍③呼気時間④横隔膜筋厚変化率(以下、ΔTdi%)。背臥位 /SF位15度/SF位30度をそれぞれ30分実施し動画撮影を行った。 ① SpO2②脈拍はモニター(DSL-80001:フクダ電子)より1分ずつの平均値を使用。③呼気時間は動画低速再生より、各姿勢25分経過以降の胸郭運動を視覚的に評価し1/100秒単位で15回計測。 ④ΔTdi%は超音波画像診断装置(vscan extend: GEヘルスケアジャパン)で側弯凸側の中腋窩線上第8・9肋骨部(Zone of apposition)から横隔膜運動を10回撮影。吸気/呼気終末時の横隔膜筋厚を画像解析ソフトImage Jで各5回計測し、最大/最小値を除く3回の平均値を使用、(吸気筋厚-呼気筋厚)/呼気筋厚 × 100から算出した。評価時のポジショニングは枕とクッションを使用し股関節/膝関節軽度屈曲位、計測はすべて同一検者が実施した。統計解析は一元配置反復測定分散分析、多重比較 にはTukey法、統計ソフトはJSTATを使用し有意水準5%とした。 </p> <p>【結果】</p> <p> SpO2は15度で増加1例、30度で減少が3例みられた(p<0.01)。脈拍は15度以上で減少が4例(p<0.05 1例、p<0.01 3例)、30度で減少が2例みられた(p<0.01)。呼気時間は15度以上で増加が 3例(p<0.01 )、30度で増加が3例(p<0.05 1例、p<0.01 2例)、 15度以上で減少が2例みられた(p<0.01 )。ΔTdi%は15度以上で増加が3例(p<0.01 )、30度で増加が1例(p<0.01 )、30度で減少が1例(p<0.01 )みられた(計測不可2例あり)。 </p> <p>【考察】</p> <p> 緊張が高い筋肉はリラックスした状態に比べ数倍の酸素消費があるとされ、リラクゼーション肢位により呼吸補助筋の過剰な活動を抑制することは重要である。今回の対象者では、SF位で脈拍減少や呼気延長する例が多くみられ、リラクゼーションに寄与した可能性がある。また2例でSpO2低下や呼気時間短縮などネガティブな変化がみられ、この2例は普段から上体を起こす姿勢をあまり好まれない傾向があり、それを支持する結果となった。呼吸障害を有する重症児(者)へのSF位はリラクゼーションや呼吸管理姿勢として有用である可能性があり、個別性に応じた配慮は必要だが、日常生活を安楽に過ごすための選択肢として活用できるものと考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は、はながしま診療所倫理審査委員会の承認を得て実施した。対象者には口頭と文書で研究内容と個人情報の取扱い、参加の有無に関わらず不利益のない旨などを十分に説明し、同意の署名を得て実施した。 </p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 51-51, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793950976
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_51
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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