理学療法介入と座位保持装置等の環境調整により「介助のしやすさ」が変化した脳性麻痺児の一症例:症例報告

DOI
  • 加藤 久幸
    北海道立子ども総合医療・療育センター リハビリテーション課
  • 井上 孝仁
    北海道立子ども総合医療・療育センター リハビリテーション課
  • 西部 寿人
    北海道立子ども総合医療・療育センター リハビリテーション課
  • 井上 和広
    北海道立子ども総合医療・療育センター リハビリテーション課
  • 藤坂 広幸
    北海道立子ども総合医療・療育センター リハビリテーション課

抄録

<p>【はじめに】</p> <p> 脳性麻痺は、身体機能低下と並行して日常の活動制限を認め、介助が必要となることが多い。理学療法評価を行う上で、介助が必要な量や動作を把握することが必要である。2014年Wardらにより、Ease of Caregiving for Children Measure (以下 ECC)が考案され、2023年には日本語版も翻訳されている。今回は、 ECCを用いて、介護者からみた「介助のしやすさ」の改善が示された1症例を経験したので報告する。 </p> <p>【対象および方法】</p> <p> 対象は、混合性脳性麻痺を持つ6歳男児。機能分類では、 GMFCS:Ⅴ・MACS:Ⅴ・CFCS:Ⅴ、EDACS:Ⅳ、在胎39週 3日、 2565gにて仮死なく出生。母の困り感として、「姿勢を保つことができず、抱っこや椅子座位、入浴時に床に座ることなど介助が大変」とのこと。身体機能としてGMFM11.76%、 頚定(+)、寝返り未、ジストニック様の筋緊張のため、感情の高低に筋緊張が左右される。床上座位は、前方もたれ座位で安定しやすい。座位保持装置は、リクライニング角度によって食事中の嚥下状態が変化する。 方法は、ECCとCanadian occupational performance measure(以下COPM)を用いて入院時と退院時 (入院2週間)に評価した。 ECCは、お子さんが安全に毎日の生活を送れるように手助けすることがどれくらい難しいかを保護者が記入する評価尺度である。項目数は12項目で、1 (とても難しい)~5 (手助けは必要ない)の5段階で採点。合計は最低12、最高60。尺度化スコアは最低0、最高100で算出した。 COPMは、目標を設定し遂行度・満足度を1 (全くしていない) ~0 (とてもしている)で採点した。 </p> <p>【結果および経過】</p> <p> ECC:入院時→退院時 (2週間)合計スコア43→49 尺度化スコア46.3→54.2 変化点した項目は、就寝時の姿勢、食事中の姿勢、服の着脱、装具着脱、入浴・身だしなみを整える、オムツ交換であった。 COPM:目標①「バギー・座位保持装置の新調と調整」は遂行度4→10、満足度2→10と変化し、目標②「お座りができるように」は遂行度2→9 満足度2→9へと変化した。 理学療法介入は、床上座位の前方もたれ座位練習に加え、自宅入浴時に使用するテーブルを作成し、入浴中に座っていられる工夫をした。座位保持装置のリクライニング角度を40度にセッティングすることでムセなく食事を摂ることが可能となった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 理学療法の介入による床上座位の姿勢保持能力が向上したことや、座位保持装置の環境調整により生活面が変化し、筋緊張が緩和したことで介助のしやすさが改善したと考える。 介助のしやすさが変化することで、COPMの目標の遂行度と満足度の変化に関与したものと推察する。 今回ECCをもとに、生活に必要な介助の実態を家族と共有し、話し合いながらアプローチしていくことの重要性を再確認し、介助のしやすさは、生活リズムや環境面でも変化するため、それらの要因に配慮して理学療法を行う必要があると考える。 今回は2週間と比較的短期的な調査であったため、今後より長期的な視点に立ち、介入、評価を継続していきたい。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>発表にあたり、患者の個人情報とプライバシーの保護に配慮し、家族から同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 56-56, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793952896
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_56
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

問題の指摘

ページトップへ