デジタルツールの導入が放課後等デイサービスにおける支援の質に与える影響

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p>放課後等デイサービス等の障害児通所支援 事業において支援の質の向上は大きな課題であり、専門職の配置により加算が発生するなど、制度面での改善が図られている。一方で、児童分野の経験が少ない職員が多く在籍するという課題も指摘されており、理学療法士等の専門職が配置される際に、いかに専門的知識を伝達していくかということが重要な視点となる。本調査では、デジタルツールの導入が、障害児通所支援施設の支援の質向上という観点において、どのような影響を及ぼし得るか検証することを目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p>デジタルツールとして、「デジリハ (Digital Interactive Rehabilitation System)」を導入している放課後等 デイサービスの中から任意の施設を4箇所選定。理学療法士4名、保育士1名の計5名に半構造化インタビューを実施。文字起こし した内容について、文脈に沿って意味を最小限の言葉で補い、コードとして抽出した。抽出されたコードは、意味的類似性に従って分類し、カテゴリー化を行った。 </p> <p>【結果】</p> <p>対象となった4施設のうち、3施設は重症心身障害児を対象とし、残り1施設は発達障害児を対象にサービス提供を行っていた。各施設では、壁面やPC画面に投影したデジリハアプリを、集団及び個別活動において日常的に利用していた。5名の半構造化インタビューより、<専門性の違い・相互理解>、 <アセスメント及び支援方針>、<支援における試行錯誤>、 <職員間のディスカッション>、<働きがい及びチームワーク >、そして<デジリハの特性>に発言をカテゴライズした。特に施設全体として、児それぞれに対するアセスメント及びそれに基づく支援方針の不足について課題として感じていた発言が多く見られた。一方デジリハ導入前後の変化として、児に合わせていかに個別最適化した介入を提供するかについての職員間でのディスカッション増加が報告された。また、デジリハの特性としては、一定の難易度や設定をいつでも提供できる”再現性”と、児の微細な動きを大きなフィードバックに変換する”拡張性”が強調された。 </p> <p>【考察】</p> <p>本調査において、障害児通所支援施設での児に対する 個別アセスメントや、それに基づく支援の実践が大きな課題であることが示唆された。専門的知識は他職種や経験年数の短い職員にとっては近寄りがたいものにもなりやすいため、いかに分かりやすく施設全体に伝達するかを多くの専門職が苦慮していることが伺える。今回インタビューを行った施設においては、デジリハ の利用をきっかけに職員間での児についてのディスカッションや、支援内容を試行錯誤する機会の増加が生じていた。これには、デ ジタルツールとしての再現性・拡張性により、職員が何度もアセスメント・介入という試行を繰り返すことが容易になった点が影響していると考えられる。誰でも一定の支援環境を提供でき、児の変化が大きなフィードバックとして得られるツールの活用が、障害児通所支援事業において理学療法士等の専門職の知識を効率的に共有し、支援の質を向上するための基盤となりうることが示唆される。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本発表において、当事者間で同意を相互に得て、実施した。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 59-59, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793954944
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_59
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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