重度な障がいをもつ子どもに対して多職種で連携した5年間の取り組みと児の変化

DOI
  • 中村 祐樹
    社会福祉法人こぐま福祉会こぐま学園 こども支援部

抄録

<p>【はじめに】</p> <p>児童発達支援の目的は、子どもが充実した毎日を過ごし、望ましい未来を作り出す力の基礎を培う為に、子どもの障がいの状態及び発達過程・特性等に充分に配慮しながら、子どもの成長を支援することである。今回、1歳8ヶ月より当施設の集団療育と個別リハを利用していた男児に対して誤嚥や変形・拘縮を予防し、健康状態を維持しながら継続的に集団療育に参加できることを目標に多職種で連携して介入を行い、介入開始から6歳までの児の変化と各取り組みの関連性について後方視的研究を実施した。 </p> <p>【方法】</p> <p>症例は、水頭症、てんかん性脳症、脳性麻痺、両側性白内障による視覚障害、知的障害(重度)を呈する1歳8ヶ月の男児。麻痺のタイプは、痙性四肢麻痺、GMFCSレベルⅤ。運動機能としては、未定頸、座位、寝返り不能。当施設の利用状況は、個別リハ(PT、OT、ST )、保育での集団療育に参加。利用開始時には、姿勢の適応性の低さ、唾液処理の難しさや食べ物の誤嚥とそれに伴う体調不良で登園困難となる事が問題となっていた。集団療育での活動を通して、好きな感覚や遊びが分かり、これらの活動と組み合わせる中で受け入れられる姿勢が増加し、変形拘縮予防や姿勢保持の為の道具の導入に繋がった。誤嚥に対しても、ST と連携しながら、姿勢保持の為のウレタン椅子や腹臥位クッションを作製するなどの姿勢ケアと経口摂取量の調整、経鼻栄養の併用などの栄養摂取方法の見直しを実施。これらの経過を踏まえた身体状況の変化についてLIFE (Life Inventory to Functional Evaluation )を用いて継続的な評価を実施し、各時期の変化を明確にし、評価結果を職員間で共有しながら支援を行った。 </p> <p>【結果】</p> <p>多職種での連携を通して、本児の健康状態が改善し、保育活動への継続した参加が可能となった。この期間に、声かけに笑顔で反応し、要求がみられるといったコミュニケーション面での発達や歩行器歩行や姿勢安定性の向上などの運動機能面の発達、行事への参加や外出機会の増加などの参加の幅も拡大した。1歳10ヶ月時と5歳8ヶ月時のLIFEの数値の変化をみるとPartⅠ:生命維持機能が35→40、PartⅡ:姿勢と運動が3→ 24、PartⅢ:日常生活場面における機能的活動が5→7、PartⅣ :生産的活動場面における参加が16→31となり、どの数値に関しても高くなった。数値の変化時期をみると、誤嚥が改善し、生命維持機能の数値が上昇した時期と同時期に姿勢と運動の数値と参加の数値が上昇した。健康状態の改善と姿勢運動機能の増加が生産的活動の場である保育への継続的な登園や外出機会の増加に伴う感覚経験の積み重ねに繋がり、PartⅢ内の他者への関心や要求の表出などのコミュニケーション面の発達へと繋がった。 </p> <p>【結論】</p> <p>乳幼児期の子どもは、様々な運動感覚経験を通して発達していく。重度な障がいをもつ子ども達にとって、この時期に集団療育の中で、親子の関係性を構築する事や親以外の人との関わりの中で主体的に多様な運動感覚経験を積み重ねていく事が総合的な発達を促進し、その後の人生における基盤を作る上で重要となる。そのために、支援者間で連携して子どもの療育参加をサポートする事が重要と考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本報告は研究目的を対象児の保護者に対する口頭と文章による十分な説明を行い、同意を得ています。また、当福祉会が設置する倫理委員会の承認を得ています。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 61-61, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793956096
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_61
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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