神奈川県立特別支援学校における医療的ケアの現状と理学療法士の役割

DOI
  • 川野 神奈
    神奈川県立平塚支援学校 連携グループ
  • 島田 蕗
    神奈川県立三ツ境養護学校 教育推進グループ

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 学校に在籍する医療的ケアを必要とする児童生徒数は増加傾向にある。神奈川県立特別支援学校では『医療的ケア担当教員養成講座』を修了した「認定特定行為業務従事者 (教員)」 (以下認定教員)が看護師と協働し医療的ケアを実施している。この講座のうち「姿勢と呼吸について」の講座を自立活動教諭 (理学療法士 (以下PT))が担当している。受講者の経験やそれに伴う背景の変化、新型コロナウイルス感染症の流行等の中で講座 内容・実施方法をPT間で検討、改善しながら毎年実施してきた。県立特別支援学校の医療的ケアの現状と、医療的ケアを必要と する児童生徒の学校生活を支えるPTの役割について報告する。 </p> <p>【方法】</p> <p> 県立特別支援学校の、医療的ケアを実施している児童生徒の増加傾向や、講座の内容と方法、その変遷について、資料を基に調査した。また、医療的ケアに関わるPTの取り組みを各校PTに聞き取り、役割を整理した。 </p> <p>【結果】</p> <p> 平成15年度、県立特別支援学校における医療的ケア承認人数 51人、実施承認ケア数60件であった。令和4年度は医療的ケア承認人数が232人、実施承認ケア数は714件であった。喀痰吸引のケアに加え、気管切開のケア、酸素療法、人工呼吸器を使用した呼吸管理等を必要とする児童生徒も同様に増加している。 PTの担当する「姿勢と呼吸について」の講座は、実技や体験の 時間を多く取り、安心安全に学校生活を送れるよう、関わり方やリスク、喀痰吸引を実施する前にできることに重点をおいた内容である。若手教員、肢体不自由教育部門未経験者の受講が増加する中で動画や写真等を多く用い、呼吸のメカニズムや呼吸機能障害、支援方法がイメージしやすい工夫を行った。新型コロナウイルス感染症の流行禍では、オンライン講座への変更、講座時間の短縮、実技に変えて動画資料の使用、事例検討でのグループワークを加えた。実技や体験、事例検討は、「理解と実践に役立った」、「個人個人で違いがあることを感じることができた」「児童生徒の立場に自分の身を置くことで児童生徒の気持ちを実感できた」等、受講者に好評だった。一方で、講座全体を通し、「一回の講座では実際に行うには難しい」「また研修があれば参加したい」との感想もあり、PTは各配置校での実際の指導・活動場面において、講座内容を個々の実態に応じて落とし込み、実践に結び付けるための役割を担ってきた。 </p> <p>【考察】</p> <p> 児童生徒に関わる医療的ケアや支援は主として担任が行っている。PTの担当する講座や日々の関わりは、担任の児童生徒への理解を深め、支援方法を具体的に示すことで、担任を支え、児童生徒の教育機会を確保し、充実した学校生活を送るための一役を担っていると考える。受講者に応じて講座内容を構成し、学校現場に即した事例や支援例を提示できること等が、学校に常駐するPTが講座を担当する強みであると考える。 受講者の声にあるよう、実際の指導場面で生かしていくかという点が課題であり、PTの日常的な関わりと共に、実践につながる講座を今後も検討する必要があると考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>平塚支援学校長の承認を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 64-64, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793957376
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_64
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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