自宅退院が可能となった重症型骨形成不全児の姿勢保持

DOI
  • 伊藤 智絵
    東京大学医学部附属病院 リハビリテーション部
  • 西坂 智佳
    東京大学医学部附属病院 リハビリテーション部
  • 藤原 清香
    東京大学医学部附属病院 リハビリテーション部
  • 衣斐 恭介
    東京大学医学部附属病院 小児科
  • 緒方 徹
    東京大学医学部附属病院 リハビリテーション部

抄録

<p>【はじめに】</p> <p> 骨形成不全症は骨の脆弱性および種々の結合組織の異常による易骨折性を主症状とする。予後はさまざまであるが全身多発骨折を認めた重症型骨形成不全症 (Sillence分類3型)のリハビリテーション治療に関する報告は少ない。今回重症型骨形成不全症児のリハビリテーション治療を経験したため報告をする。 </p> <p>【症例報告】</p> <p> 在胎22週にて当院を受診され、在胎31週に胎児CTにて膜様頭蓋、多発肋骨骨折、上腕・大腿骨骨折、下腿骨の形態異常があり骨 形成不全症の出生前診断となった。在胎38週、出生時体重 2677g、骨盤位経腟分娩で当院にて出生した。本患児の全身状態が安定してきた出生後183日目に新生児科・小児科・整形外 科医師、看護師、理学療法士で1回目の退院支援カンファレンスを実施した。カンファレンス結果を受け、リハビリテーション科としては主に移動面や母親の自宅での介助量軽減を目標として介入を開始した。 重症型骨形成不全症による頭蓋底陥入症を生じる恐れがあり、安静度としてヘッドアップが制限されていた。しかし、入院経過中に栄養の逆流や誤嚥を予防するため常時10-20度のヘッドアップが必要であった。また出生後265日目より離乳食を開始 し、食事の際には30度程度のヘッドアップ姿勢が必要となった。この際にベッド上でのずり落ち予防が必要となったが、大腿骨、下腿骨が骨形態異常あることや易骨折性を考慮すると下肢を積極的に支持脚とすることは困難と判断した。そこで陰圧式クッション(イーコレ・ベーシック(瀧野コルク工業株式会社製))を 使用し、ヘッドアップに伴う応力が一点に集中することを避けながらずり落ちを回避させることができた。また発達に伴い本患児の体動が増加していた時期でもあり、イーコレ・ベーシックを使用することで寝返りも無理なく制限することができ、転落などの恐れが減少したことで母のケアや経口摂取時のリスクが減少した。また、自宅退院後に使用予定のベッドやバギー内にも、必要とされる安静度としての傾斜をつけ、院内外泊で試用しながら、両親から意見を伺い自宅で実際に使用しやすいよう調整した。 </p> <p>【結果および経過】</p> <p> 退院後に使用する予定のバギーやベッドを使用し院内外泊を経たことで、退院に向けての問題点を事前に整理することができた。出生後312日目に訪問診療のスタッフと退院時カンファレンスを実施し自宅退院が可能となった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 骨形成不全症による骨変形や易骨折性は個別性が高く、理学療法では骨折を生じないよう患児の表情やバイタルサイン等を確認しながら、慎重にヘッドアップ姿勢を評価・実施することが重要だった。また、自宅でヘッドアップ姿勢を維持することやベッド上でのずり落ちに対する予防策を解決するために時間を要したため早期からの退院準備が必要であった。両親の骨折リスクに対する不安に対しても、院内外泊を経たことで患児のケアを両親のみで実施することと訪問診療のスタッフの支援のもとで連携して実施すべきことを明確化できたことで、退院後の生活にむけて両親の不安の払拭につながったと考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>対象者の家族に、口頭にてプライバシー保護に配慮する旨説明を行い同意を取得した。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 68-68, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793958784
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_68
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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