遺伝子治療を行った脊髄性筋萎縮症Ⅰ型の一症例報告 -運動機能獲得の経過に着目して-

DOI
  • 塚本 栞
    獨協医科大学埼玉医療センター リハビリテーション科
  • 長谷川 三希子
    獨協医科大学埼玉医療センター リハビリテーション科
  • 齋藤 潤孝
    獨協医科大学埼玉医療センター リハビリテーション科
  • 北島 翼
    獨協医科大学埼玉医療センター 子どものこころ診療センター
  • 井上 建
    獨協医科大学埼玉医療センター 子どものこころ診療センター
  • 大谷 良子
    獨協医科大学埼玉医療センター 子どものこころ診療センター
  • 村上 信行
    獨協医科大学埼玉医療センター 小児科
  • 作田 亮一
    獨協医科大学埼玉医療センター 子どものこころ診療センター
  • 上條 義一郎
    獨協医科大学埼玉医療センター リハビリテーション科

Abstract

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 近年、薬剤治療により脊髄性筋萎縮症 (以下SMA)Ⅰ型の運動機能が向上すると報告されている。しかし発達における座位・立位・歩行の獲得可否が中心であり、その機能獲得の過程および理学療法について詳細な報告はない。 今回、遺伝子治療薬オナセムノゲンアベパルボベクにて治療後 3年が経過した児の運動機能獲得の経過と理学療法についてまとめ、報告する。 </p> <p>【方法および症例報告】</p> <p> 症例は4歳女児。周産期および生後1-4か月健診で異常は指摘されなかった。10ヶ月で筋緊張低下が認められ、1歳0か月に SMAⅠ型( SMN1 0コピー/ SMN2 3コピー)と診断、1歳1か月にオナセムノゲンアベパルボベクが投与された。 遺伝子治療を行った本児に対して、運動機能における姿勢保持 ・姿勢変換・移動に関して経過をまとめた。3年の経過を、治療前を治療前期、治療-1年を1期、1-2年を2期、2-3年を3期とした。運動機能評価はChildren’s Hospital of Philadelphia Infant Test of Neuromuscular Disorder(以下CHOP INTEND)、 Hammersmith Functional Motor Scale Examination(以下 HFMSE)、Hammersmith Infant Neurological Examination Section2(以下HINE2)を評価した。 </p> <p>【結果および経過】</p> <p> 運動機能の獲得時期を[治療前期/1期/2期/3期]でまとめた。姿勢保持は[両手支持での座位/独/両肘支持での腹臥位 /両手支持での腹臥位、四つ這い]、姿勢変換は[背臥位から側臥位/寝返り・寝返り返り、あぐら座位⇄横座り・割座/座位 →臥位、臥位→座位/新規獲得なし (以下―)]、移動は[―/寝返りで平地移動、座位でプッシュアップ移動/―/腹這い]であった。 理学療法は1歳4か月より骨盤帯付長下肢装具を用いた積極的な立位練習の他、お風呂やプールで浮力を利用した立位の指導、免荷型玩具を使用した下肢伸展活動を促した。また上肢の支持性向上を図るため、装具装着下の立位にて壁を使用した腕立て伏せ様練習や、自重をサポートし両手・肘支持での腹臥位練習を行った。姿勢変換は、まず寝返りと寝返り返りの方法を指導した。座位⇄臥位に関しては、はじめに座位→臥位を後方のソファーに寄り掛かりながら横に倒れる方法から開始した。次に自立へ向け、床上座位で前方に手をつきながらクッションに寄りかかり倒れ起き上がる方法で反復して練習を行い、徐々にクッションの高さを低くしながら、その後自立した。移動は、腹臥位で台車に上半身の体重を預けながら下肢を動かす練習、摩擦が軽減する場所でプッシュアップを行いながら座位移動練習を行った。また、軽い力で進む足漕ぎ型乗用玩具や、2歳11か月からは自走式車椅子を使用した。 運動機能評価は治療直前/1年/ 2年/3年で、CHOP INTENDは 44/56/56/58、HFMSEは2/15/22/25、HINE2は9/16/19/20 であった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 本症例は治療後、運動機能が緩徐に向上を認めた。疾患特有の 筋緊張低下と筋力低下により定型発達の順序とは異なるものの、自重の調整や浮力を利用した環境で積極的に身体活動を促すとともに機能に合わせた方法を提示したことで、運動機能の向上に繋がったと考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p> 本発表に際し、患者の個人情報とプライバシ ーの保護に配慮し、説明を十分に行い、ご家族より同意を得た。 </p>

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